「時間・人」当たりの生産性が倍になったD社の取り組み(2)【今日から実践!基本からの生産管理・第4回】

前回は、改善チームが間接作業を無くすことの重要性に気づいたところまでをご紹介しました。
今回は、その効果について見ていきましょう。

 

「積み重ね禁止」の効果

D社の工程は、材料切断→加工→接着→バリ取り→仕上げ→検査→梱包 の流れでした。

このうち、「バリ取り→仕上げ→検査→梱包」のラインで、問題と指摘した「積み重ね作業」を禁止にしてみました。
とは言いましても、作業者ごとに作業スピードが異なりますから、積み重ねないと手待ちになる状況が生じます。

その場合は、後工程を手伝うようにルール化しました。

その結果、各工程の間での積み重ね・積み下ろしが無くなって、無駄な作業が削減され、付加価値を生む作業を行う割合が増えました。
また、積み重ねという状態での滞留が無くなったため、バリ取りを始めてから製品が梱包されて出てくるまでの時間(リードタイム)が短くなりました。

改善チームのメンバーも「なるほど」と効果を実感してくれました。

 

生産順番の問題

さて、「バリ取り→仕上げ→検査→梱包」の工程はスムーズになりましたが、現場を見ていると接着後の仕掛品がなかなか減りません。

接着後の仕掛品がたくさん台車に積まれています。後半の工程がスムーズになったので、仕掛が減ることも期待していたのですが、何か別の問題があるようです。

「なぜこんなに仕掛品を台車に積んだままにしているのですか」
「生産を開始した後に生産の優先順位が変わるんです」
「ええっ?」
生産途中で、順番を入れ替えているため、仕掛品が溜まっているのでした。

状況をよく確認してみると、材料の仕分け場所が狭いため、当日の生産予定の材料を取り出しやすいものから順番に投入していたことが原因でした。

材料が大きく、投入場所での取り回しが大変なため、とにかく接着工程まで進めて、サイズが小さくなった段階で台車に載せて、そこで順番を入れ替えていたのです。

しかし、そのために工場の中は、仕掛品が積まれた台車で一杯になっていました。

「材料の投入は、出荷の順番にすることが原則ですよ! 材料投入前に優先順位を決めることはできますか」
「お客様の引取と遠方への配送分が優先になります。自社配送分は翌朝にトラックが出ますから後回しでも大丈夫です」
「では、その順番で投入しましょう」
「でも、材料置き場は狭いし、一人で優先順位の通りに材料を取り出すのは大変です」
「材料投入係を一人増やしてもやる価値は十分あると思いますよ。それに、仕掛品が減れば、材料の仕分け場所を広げることもできますよね。まずは、試しにやってみましょう」

材料投入作業の手間は増えましたが、生産の流れがさらにスムーズになり、仕掛品も減ってきました。

改善チームが効果を実感した後で、台車は必要最小限だけ残して、残りは全部倉庫に持っていき、工場内もスッキリと広くなりました。

 

改善の効果

その他にも、「仕上げ作業をする時に塗料が揃っていない」ことや「工場内の動線の問題」など、改善チームからの問題提起もあり、徐々に改善を進めました。

このような改善を進めた結果、「バリ取り→仕上げ→検査→梱包」の作業における、作業者一人・1時間当たりの生産本数は、改善前の8本が半年後に12本、1年後に14本、2年後には16本を超えるまでになりました。生産性は、なんと倍になっていました。

中小企業で、通常の生産業務や作業者の教育も行いながらの取り組みですから、時間はかかりましたが、大幅に「生産性」を向上させることができました。
これまで以上の受注を受けながら、残業時間を大幅に減らすことができました。

今回の改善のポイントは、付加価値を生まない間接作業を減らしたことと、出荷順番通りに材料を投入して、工場内の仕掛品を減らしたことです。
このような改善方法は、作業のやり方を変えるだけですから、大きな設備投資は不要です。皆さんの工場でも使えるのではないでしょうか。

次回は、多くの工場での共通の課題「ボトルネック」について考えてみましょう。

次回コラム

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この記事の執筆者

澤田 兼一郎
(株式会社みどり合同経営 代表取締役/中小企業診断士)

立命館大学経済学部経済学科卒業、第二地方銀行を経て当社に入社。中小企業を中心に、経営計画や事業計画の実行性を高める、現場主義のコンサルティングを実施。
特に中小建設業、製造業の経営管理体制の構築、実行力を高めていく組織再構築等のノウハウ等について評価を受ける。

犬飼 あゆみ
(株式会社みどり合同経営 取締役/中小企業診断士)

一橋大学法学部卒業、大手自動車会社のバイヤー(部品調達)として勤務後、当社へ入社。
企業評価における事業DDのスペシャリスト。事業DDでの経営課題の洗い出しをもとに、事業計画や経営計画(利益計画&行動計画)の策定・実行支援が専門分野。

この記事のアドバイザー

阿部 守 先生
(MABコンサルティング 中小企業診断士/一級建築士 )

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