ボトルネックに着目して生産性を上げる手順【今日から実践!基本からの生産管理・第6回】

前回は、ボトルネックの本当の意味として「ボトルネックの能力で工場の能力が決まる」ことをご紹介しました。
今回は、ボトルネックに着目した生産性改善の手順をご紹介します。


「ザ・ゴール」の教え

ボトルネックに着目した生産性改善の手順は、ベストセラーとなったゴールドラット博士の「ザ・ゴール」でも詳しく説明されています。

同書では、改善の5ステップとして以下の手順が示されています。

1.ボトルネックを見つける
ボトルネックを見つけるためのヒントは、
(1)どこで仕事が滞留しているか、
(2)どの工程の稼働率が高いか、
(3)多くの問題の発生がどこに原因があるか、
(4)重要な工程はどれか、
です。
稼働率や仕掛品の状態からボトルネックを判断します。

2.ボトルネックを徹底的に活用する
ボトルネック工程では、
(1)段取り時間の短縮、
(2)トラブルの削減、
(3)材料待ち時間の削減、
(4)歩留まりの向上、
(5)稼働時間の延長を図ります。
こうしてボトルネックの能力を最大限に引き出します。

ボトルネックの徹底活用というと、時間短縮やスピードアップばかり考えてしまい、見落としがちなのが「生産がストップしている時間」です。
たとえば、品種切り替えのための段取り換えは作業者にとっては「頑張って作業をしている時間」ではありますが、生産はストップしています。
この時間をいかに短くするか、事前にその準備をしておく(外段取り化)などの工夫を凝らします。

3.ボトルネック以外をボトルネックに従わせる
他の工程は、ボトルネック工程の能力が最大限発揮できるようにサポートします。
(1)他の工程の都合でボトルネックの能力を低下させない、
(2)ボトルネック工程から出てきたものは、留めることなくそのまま流す、
(3)ボトルネック工程の能力に合わせて材料を投入することで仕掛を必要
以上に増やさないことが大切です。

ボトルネック工程が他の工程のトラブル等により影響を受けないよう、ボトルネック工程の前には計画的な在庫(バッファー)を設置し、それ以外の工程は稼働率を高めるという考えをやめ、仕掛在庫を持たないようにします。

4.ボトルネックを強化する
ボトルネック工程以上の需要が、この先も継続する見込みがあるなら、設備投資などによって、ボトルネック工程の能力を上げることを検討します。
「設備投資をしたら、設計変更によって必要なくなってしまった」とならないよう、将来的な設計変更の可能性はどうか、遊休設備の改造等で済ませられないかなど、十分に検討することが大切です。

5.惰性に注意しながら繰り返す
ここまでの取り組みでボトルネックが移動している場合は、新たなボトルネックを見つけて、1.~4.を繰り返します。


全体最適の難しさ

この中で、難しいのが「3. ボトルネック以外をボトルネックに従わせる」です。

担当者は、これまでの仕事では、自工程の生産性を上げることで評価されてきたはずです。
ですから、自工程の生産性を最大にしようとする習慣から抜け出しにくいのです。
工場長は、「部分最適ではなく全体最適」「工場全体のために」という視点を理解させることが大切です。

次回は、「ボトルネック」を見つけて改善に結びつけた工場の事例をご紹介します。

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この記事の執筆者

澤田 兼一郎
(株式会社みどり合同経営 代表取締役/中小企業診断士)

立命館大学経済学部経済学科卒業、第二地方銀行を経て当社に入社。中小企業を中心に、経営計画や事業計画の実行性を高める、現場主義のコンサルティングを実施。
特に中小建設業、製造業の経営管理体制の構築、実行力を高めていく組織再構築等のノウハウ等について評価を受ける。

犬飼 あゆみ
(株式会社みどり合同経営 取締役/中小企業診断士)

一橋大学法学部卒業、大手自動車会社のバイヤー(部品調達)として勤務後、当社へ入社。
企業評価における事業DDのスペシャリスト。事業DDでの経営課題の洗い出しをもとに、事業計画や経営計画(利益計画&行動計画)の策定・実行支援が専門分野。

この記事のアドバイザー

阿部 守 先生
(MABコンサルティング 中小企業診断士/一級建築士 )

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