前回は、間接作業を無くすことで生産性を上げた事例をご紹介しました。
今回は、工場のボトルネックについて考えてみましょう。
ボトルネックとは
X社の工場では、A→B→C→Dの4つの工程で製品Xを生産しています。
それぞれの工程の1時間当たりの生産能力が以下のとおりだとすると、生産能力が最も低いC工程がこの工場のボトルネックとなります。
+————+—————-+—————-+—————-+—————–+
| 工程 | A工程 → B工程 → C工程 → D工程 |
+————+—————-+—————-+—————-+—————–+
|生産能力|50個/時間|30個/時間|20個/時間 | 40個/時間|
+————+—————-+—————-+—————-+—————–+
ボトルネックとは、「全体の結果や性能を左右する最大の要因」と定義され、生産工場では、最も能力の低い工程がそれに当たります。
この工場では、A、B、Dの工程がいくら頑張っても、1時間に20個以上の製品を「完成」させることができないことがわかります。
つまり、「工場の能力はボトルネックで決まる」のです。
ボトルネックの本当の意味
このようなことから「ボトルネック」を管理して能力を最大化させることの重要性が広く知られています。
しかし、きちんと実行できている工場は多くありません。
ひとつの理由は、現実の工場では本当のボトルネックを特定することが困難だからです。
上の例では製品Xだけを生産しているので、簡単にボトルネックを特定することができましたが、実際にはこのように単純ではありません。
一般的な工場では、多種多様な製品を作っています。
製品によって関わる工程やそこでの生産時間が異なりますから、ボトルネックが分かりにくくなります。
その結果、工場では、どの工程も忙しくて能力が不足しているように見えます。
また、高価な設備を使う工程や技術的に高度な処理をする工程などを管理者がボトルネックだと思い込んでいる、ということがあります。
高価な設備で処理する数量を増やすことで原価を下げることができると考えているからです。
ところが、いくら高価な設備での生産数を増やしても、製品が完成しなければ販売することはできません。
「工場全体の能力がボトルネックで決まる」ということは「製品の原価もボトルネックの能力で決まる」のです。
さらに、ボトルネックの能力は本来、もっと高いのにそれが発揮できていないこともあります。
上の例で説明すると、現在、A工程が都合の良い順番で製品を生産して、そのまま後工程に流すと生産能力は表のようになっているとします。
しかし、C工程の都合の良い順番で生産すると、各工程の能力が変わる場合があります。
仮に、C工程の都合の良い順番で生産することで、C工程での準備や段取替時間を減らすことができ、生産能力を20個/時間から25個/時間に上げることができるとします。
そうであれば、C工程の都合に合わせて生産順番を変更することで、A工程の能力が50個/時間から40個/時間に低下するとしても、生産順番の変更を検討するべきなのです。
C工程の能力向上に伴って工場全体の生産能力が「20個/時間」から「25個/時間」に向上するからです。
工場のボトルネックを発見すると、すぐに設備補強や増員によってボトルネックの能力を向上させようとする工場もありますが、その前に、活用されていない能力を発揮させることが大切なのです。
次回は、「ボトルネック」を見つけて改善につなげる手順について解説いたします。
関連サービス
動画で分かりやすく解説!おすすめコンテンツ
関連サービス
動画で分かりやすく解説!おすすめコンテンツ
この記事の執筆者
澤田 兼一郎
(株式会社みどり合同経営 代表取締役/中小企業診断士)
立命館大学経済学部経済学科卒業、第二地方銀行を経て当社に入社。中小企業を中心に、経営計画や事業計画の実行性を高める、現場主義のコンサルティングを実施。
特に中小建設業、製造業の経営管理体制の構築、実行力を高めていく組織再構築等のノウハウ等について評価を受ける。
犬飼 あゆみ
(株式会社みどり合同経営 取締役/中小企業診断士)
一橋大学法学部卒業、大手自動車会社のバイヤー(部品調達)として勤務後、当社へ入社。
企業評価における事業DDのスペシャリスト。事業DDでの経営課題の洗い出しをもとに、事業計画や経営計画(利益計画&行動計画)の策定・実行支援が専門分野。