工事別管理カード:全員で情報を記載する仕組み
今回も引き続き工事別管理カードの具体的内容について考えていくことにしましょう。
前回は、工事別管理カードの表紙について2つのポイントについてお話しました。今回時系列に情報を記載していく、カードの中身について考えていくことにします。
前にもお話しましたが、工事別管理カードの中身は、営業段階から竣工までに顧客や設計事務所、外注先との折衝、重要事項を時系列に記載していきます。それを、担当者から責任者、責任者から担当者へと常にまわすことで、情報共有を徹底していく役割を果たします。具体的にいいますと、報告、相談、連絡、指示を工事別管理カードに記載するわけです。
この業界では工事別に担当者がついており、工事管理ノウハウである、段取りや資材単価、VE (※)案等が個人の属性に依存しています。それを会社全体に水平転換する為には、このような全員の目が工事別に行き届く必要があるわけです。
ノウハウの共有というと抽象的になりますが、現場で結果として数値で効果が上がってきます。具体的な例をあげますと、まず顧客との折衝内容の引き継ぎ漏れによる原価増大が防げるようになります。よくある例ですが、営業が現場を知らないことにより、顧客が要望しているものが、どの程度の品質を求めているのか、どの程度の工事が必要なのか、そもそも当社の予算内に含まれているのかの判断ミスを犯すことがあります。言うまでもなく、これは原価増加の要因になる項目です。このような顧客との折衝については、都度内容を記載しておき、常に各責任者がチェックを徹底していけば、防げることです。
また、受注済みの工事についても、追加、変更依頼をきちんと記載することにより、早めに交渉ができ、もらい忘れが防げるという点もあげられます。このことも、経緯をカードへ徹底して記載することで予防できる話です。
工事管理カードの利用はこれだけではありません。次回引き続きその内容について考えていくことにします。
ポイント
時系列に情報を記載していく工事別管理カードとは、
・営業段階から竣工までの、顧客・外注先などとの折衝、重要事項を時系列に記載する。
・担当者 ⇔ 責任者へ情報を常に回していく。
↓
報告・相談・連絡・指示全てが、カードに蓄積される。
(※)VE(Value Engineering)とは、製品やサービスの「価値」を、それが果たすべき「機能」とそのためにかける「コスト」との関係で把握し、 システム化された手順によって「価値」の向上をはかる手法のこと。