A社は、設備工事業を営んでいる会社です。
経営改善をスピードアップするために経営会議の内容を見直し、経営幹部でもある各部門長の意識改革を進めることとしました。
まずは会議で使用する管理資料の作成から始めることになり、これまでの売上高重視の方針から、利益重視へと意識を変えるために「付加価値」を取り入れた管理資料を作ろうと社長、藤村総務部長と打合せを進めている途中までのお話を前回までにさせて頂きました。
(付加価値の定義につきましては、前回ご説明しましたが、簡単におさらいすると
付加価値 = 完成工事高 - (材料費 + 外注費 + 工事経費)
となり、付加価値から労務費(社内労務費)、減価償却費などを差し引くと工事利益となります。
なお、付加価値の定義には色々とありますが、本記事では、上記の通り単純に考えることとします)
管理資料の検討②
社長:「当社に付加価値はいくら必要なのか?」
私:「すでに策定されている計画では、約4億2千万円(年間)必要になります。付加価値率で言うと35%。計画通り固定費がかかったとすると7千2百万円の営業利益が出ることになります。」
藤村総務部長:「月額にすると約35百万円の付加価値を目標にすればいいと言う事ですね。」
私:「そうですね。目標が理解しやすくなったと思います。簡単な例で説明すると『営業部で12億円の工事を受注して、工事部で35%の付加価値率を目標に工事をこなし、藤村総務部長は販管費を予算以内に納める努力をしていただく。』という事です。反対に完成工事高12億円を達成したのに付加価値が計画より少ないというときは、営業部が利益の薄い工事を受注したのか、工事部で予定工事原価をオーバーしたのかなど、付加価値未達成の原因を会議にて議論することができます。こうやって見ていくことでどの部分が計画通りいったのか、どこが悪かったのか原因を分析し対策を検討しやすくなりますよね。」
社長:「確かにこれまでは営業利益がいくらだとかマイナスだとか話しても皆あまりピンと来なくて、大した議論になっていなかったと思う。」
藤村総務部長:「計画では、7千2百万円の営業利益を目標にしていますが、完成工事高が減少し、業績が悪くなっても固定費(労務費、販管費)を付加価値で賄う事が出来れば、赤字にはならないと考えることができますね(以下利益とは営業利益以降の損益が発生しない場合の税引前当期純利益とします)。」
私:「おっしゃる通り、付加価値と固定費が同額の場合は利益が0となり、それ以上付加価値が増えた分は利益がプラスとなります。経営幹部の方がこの視点で管理資料を見ることができるようになれば、色々な場面で判断基準とすることや対応策を考える場合の参考とすることができます。」
次回は、この管理資料を実際に経営会議で検討した事をお話致します。