原価企画のフローと前提条件【中小製造業の原価企画のポイント・第8回】

前回は、原価企画の目標設定についてお話しました。
さて、目標の設定ができれば、あとは目標をクリアするためのコスト低減活動の実施あるのみです。
今回は、コスト低減活動のPDCAサイクルとその前提条件について考えてみたいと思います。

 

コスト低減活動のPDCAサイクルとは

コスト低減活動のPDCAサイクルとは、前回お話した部品別、部門別にブレークダウンされた目標設定を受けて(P)、
①全関連部門が意見を出し合いながらコスト低減案を検討し(D)、
②この案を実施した場合の製品の原価を見積り(C)、
③目標をクリアしていれば製造開始、クリアしていなければ見直し(A)、

ということになります。
これは、コスト面に絞ってお話していますので、もちろん、これらの案を実施した場合に製品がスペックをクリアできるか等のチェックも同時に行なっていくことになります。

基本的に、このPDCAサイクルを1回転させただけでは、目標金額に到達するわけがないと考える必要があります。
通常の原価企画活動では、このサイクルを4~5回実施しているのが実情ではないでしょうか。
そのため、4、5回実施することを前提に、製品の製造・販売を開始したい時期からどれだけ前に活動に入るのか、どの段階でコストの検証をするのか等を事前に計画しておきます。
この活動期間は製品種類によって全く違いますが、製品ライフサイクルが短くなっていることにより、どんどん回転を速くしていくことが求められていると感じています。

このPDCAサイクルを回していく大前提として、大きく次の2点が重要だと考えています。

①全社的な取組みとすること
②原価企画に携わるメンバーが、原価について共通の認識を持つこと

①については、プロジェクトメンバーとして、開発・設計者、製造担当者、購買担当者はもちろんのこと、お客様の声を知っている営業担当者などを入れながら、文字通り全社的に取り組むということです。
これは、普段から各部門が顔を合わせやすい中小企業では、比較的実行しやすいのではないでしょうか。

次に②の、原価についての共通の認識を持つというのは、原価を購買担当者しかはじけないということでは、コスト低減につながる案が出せないことになるからです。
設計者が安くなると思って書いた図案が、逆に高くなるというのでは困ってしまいます。
そこで、「コストテーブル」を作り、共有化することが必要になります。
コストテーブルとは、単に既存の部品などの値段をリストアップにしたものに留まらず、例えば、「既存のものを10cm短くしたらいくら?」、「材料をこれに変更したらいくら?」、ということが見てすぐに分かるものであることが大切です。

余談になりますが、コストテーブルを作成し、取引業者さんと交渉しながら毎年安くなるようにテーブルを改廃していくことが、購買担当者の重要な仕事の一つです。
コストテーブルを一度に全て整備することは困難ですが、主要な製品、主要な部品からまず着手してはどうでしょうか。
その後の購買業務も楽になります。

このテーブルがあることで、設計者が「この部品をこう変更したらいくら安くできる」、更には営業担当者が「この機能を廃止したらいくら安くできる」ということがわかり、最終的には製造担当者から見た造りやすさも勘案して決定していきます。
こうして初めて全社的な取組みができるようになるのです。

それでは次回からは、PDCAのDの段階として、具体的にどのようにコスト低減案を出していくかを考えていきたいと思います。

この記事の執筆者

犬飼 あゆみ
(株式会社みどり合同経営 取締役/中小企業診断士)

一橋大学法学部卒業、大手自動車会社のバイヤー(部品調達)として勤務後、当社へ入社。
企業評価における事業DDのスペシャリスト。事業DDでの経営課題の洗い出しをもとに、事業計画や経営計画(利益計画&行動計画)の策定・実行支援が専門分野。

この記事の執筆者

犬飼

犬飼 あゆみ
(株式会社みどり合同経営
取締役
中小企業診断士)

一橋大学法学部卒業、大手自動車会社のバイヤー(部品調達)として勤務後、当社へ入社。
企業評価における事業DDのスペシャリスト。事業DDでの経営課題の洗い出しをもとに、事業計画や経営計画(利益計画&行動計画)の策定・実行支援が専門分野。

関連記事