前回まで、「狭義の原価管理」と、その前提ともいえる原価計算についてお話してきました。
この「狭義の原価管理」で、標準との乖離をできるだけ小さくしていけばロスの削減となり、また社内での原価意識の定着にもなることから、ある程度のコスト改善ができると思います。
しかし、標準原価とはやはり原価の積上げですから、製品のコスト競争力が格段に上がるということは難しいのが実情です。
そこで、標準原価ではなく、目標原価を設定して、それに向けて製品の企画・開発段階からコストを作り上げていく活動が必要になります。
それが、原価企画という考え方です。
今回からは、この原価企画について、考えていきたいと思います。
これまでお話してきた狭義の原価管理が、標準原価との乖離の改善であるのに対し、この原価企画とは、標準原価そのものを引き下げようとする活動をいいます。
なぜなら、以前は積上げた原価に利益を上乗せした販売金額で出せていたものが、現在では変わってきてしまったからです。
原価は積上げで計算するものではなく、作り上げるものに変わってきました。
製品は販売金額に相応しい機能をもっていなければならず、逆にいうと、許容される原価の範囲内で製品を生産するために、製品の持つべき機能を決定する必要があります。
金額以上の過剰機能・過剰品質では会社が成り立ちません。
そこで、製品の開発・設計段階で、本当にお客様がほしいと思う機能を織り込みながら、原価を作りこむ活動が必要になっているのです。
この段階での上手な企画は、製造段階でのコストダウン活動に比べ10倍もの効果があるとか、「原価の8割は設計(仕様)で決まる」といわれています。
特に、製品ライフサイクルが短くなっている昨今では、製造現場でのコストダウンを行う余地が少なくなっており、ライフサイクルの短い製品に対しては、開発段階からのコストの作りこみが一層重要になっているように思います。
原価企画の中身としては、
①適正な目標原価の設定
②この目標をクリアするためのコスト低減活動
の大きく2つに分けられます。
それでは次回は、①適正な目標原価の設定について考えていきたいと思います。
この記事の執筆者
犬飼 あゆみ
(株式会社みどり合同経営 取締役/中小企業診断士)
一橋大学法学部卒業、大手自動車会社のバイヤー(部品調達)として勤務後、当社へ入社。
企業評価における事業DDのスペシャリスト。事業DDでの経営課題の洗い出しをもとに、事業計画や経営計画(利益計画&行動計画)の策定・実行支援が専門分野。
この記事の執筆者
犬飼 あゆみ
(株式会社みどり合同経営
取締役
中小企業診断士)
一橋大学法学部卒業、大手自動車会社のバイヤー(部品調達)として勤務後、当社へ入社。
企業評価における事業DDのスペシャリスト。事業DDでの経営課題の洗い出しをもとに、事業計画や経営計画(利益計画&行動計画)の策定・実行支援が専門分野。