原価計算のポイント(2)【中小製造業の原価企画のポイント・第4回】

前回は原価管理のポイントとして、直接材料費や直接部品費、外注費に焦点を絞って行うほうが簡単で取り掛かりやすいということ、その具体的方法として「水すまし」を導入することが、原価計算に必要な継続的記録を容易にできること、をお話しました。
今回は、もう1つのポイントとして、原価計算の見える化について考えていきたいと思います。

それは、水すましなどによって把握された原価の資料を、どんどん社内に、情報開示していくということです。
情報開示は原価管理の3段階の、どの段階でも重要になりますが、そのメリットとしては、大きく2点あると思います。

まず1点はお分かりのことと思いますが、社内でのコスト意識を高めるという点です。
「この製品は確か○○円で売っているが、材料費だけでこんなにかかっているのか~」という気づきが、コスト意識につながります。

初回にもお話しましたが、一部の担当者だけが原価を把握するというのではなく、実際に製品の規格・設計を行う社員や現場でモノづくりを行う社員などの意識が揃って初めて、原価管理の目的であるコスト競争力の向上が図られるからです。

そしてもう1点は、継続的記帳とその精度アップのためです。
水すましなどによる原価の継続的記録もなかなか大変な作業です。
その結果としての原価資料を、経営陣がチラッと見て机に入れてしまうだけでは原価計算自体が形式的なものになってしまい、最終的には、「担当者が忙しいからやらなくなってしまった・・・」といった会社も見られます。

「卵が先か、鶏が先か」といった感じではありますが、みんなが見るということ自体が、毎日正確な原価計算を行う習慣付けのポイントです。

それでは、その情報開示をどのように行うかですが、具体的には、見やすいことやタイミング(スピード)なども大事ですが、最も重要なのは「比べる対象がある」ということだと思います。
最初のうちは、前回の作業時との比較で良いと思います。
将来的には、以前にお話した「標準原価」、つまり「理論的にいうと、これくらいでできるだろう!」という原価との比較や、更には目標原価との比較をすることが大切になります。

この「標準原価」との比較が、原価管理の第2段階である、狭義の原価管理の基本的な考え方です。
次回からは、この狭義の原価管理について考えていきたいと思います。

次回コラム

この記事の執筆者

犬飼 あゆみ
(株式会社みどり合同経営 取締役/中小企業診断士)

一橋大学法学部卒業、大手自動車会社のバイヤー(部品調達)として勤務後、当社へ入社。
企業評価における事業DDのスペシャリスト。事業DDでの経営課題の洗い出しをもとに、事業計画や経営計画(利益計画&行動計画)の策定・実行支援が専門分野。

この記事の執筆者

犬飼

犬飼 あゆみ
(株式会社みどり合同経営
取締役
中小企業診断士)

一橋大学法学部卒業、大手自動車会社のバイヤー(部品調達)として勤務後、当社へ入社。
企業評価における事業DDのスペシャリスト。事業DDでの経営課題の洗い出しをもとに、事業計画や経営計画(利益計画&行動計画)の策定・実行支援が専門分野。

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