再建計画書の作成【再建計画書シリーズ・第5回】

皆様、本格的に暑くなってきましたが、いかがお過ごしでしょうか?経営支援室の久保です。実は、最近、実感として思っていることで、すっごいことが一つあります・・・

それは、完全に本人(社長自身)もあきらめかけており、誰に相談しても再建は無理だといわれた会社の80%が、色々突き詰めてみると、生き残り可能だったという、衝撃的な事実です!

(*_*)(*_*)(*_*)(*_*)(*_*)(*_*)(当社調べのみのデータですが・・・)

それは大げさだよ、という方が大多数だと思いますが、本当にホントなのです。

企業の再生って、奥が深いなーと思います。
経営がピンチだと思っている経営者の皆様、決して諦めるなかれ!

さて、今日も張り切って参りましょう・・・

◆前回までの流れ
再建計画書による企業再生の流れを説明させて頂いています。
第1回は、再建計画書作成の意義とその流れ
第2回は、資金繰り表の作成と当面の資金の手当について
第3回は、現状把握(時価バランス、清算バランス、損益分析)
第4回は、予算の組立について、説明させて頂きました。

第5回である今回は、「再建計画書の作成」について、説明させて頂きます。

◆いよいよ、再建計画書をつくっていきましょう・・・

さて、いよいよ、大まかな予算(出すべき利益、キャッシュフロー)も決まったところで、実際の再建計画書作りに入っていきましょう。
この、計画書を作成するに当たっては、まず、以下の2つの数字の乖離を把握するところから入ります。

即ち、(1)「現状から、実現可能なリストラを行った上での損益計画」と、(2)「金融機関を納得させられる、損益・キャッシュフロー計画」とがどれだけ乖離しているかを、まず検討します。

◆まずは、実現可能な損益計画の作成です・・・

(1)について説明いたします。
まず、現在の損益計算書を、きちんと、スループット(売上-仕入-外注)、変動経費(事業種類毎に)、固定経費(事業部別+本部経費に分ける)に切り分けたものを準備します。

次に、来期以降(来月以降)、最低限確保出来る売上高を、予測いたします。ここで、間違わないで頂きたいのは、期待を込めた右肩上がりの売上予測を、絶対に立てないことです。

再建計画書というのは、立てたら終わりというものではなく、計画に従って、「実行できてなんぼ」の世界だという事です。ですから、例えば、再建計画書を銀行に提出して、一旦認めて頂いた後でも、その後の結果が立てた予算と乖離しているようであれば、一発で信用を無くしてしまい、もう一度信用を取り戻すのは、極めて困難な状況となってしまうのです。

ポイント1:売上高はきつめの予想を立てる。市場が縮小傾向にあれば、対前期比○%ダウンという方が、かえって望ましい。

次に、仕入、外注といった、いわゆる「外に出て行っているコスト」を、いくら削減できるかを、検討いたします。この場合は、過去のデータと比較し、売上高に対する比率で検討していきます。

ここで、大切なのは、自分の会社が「待ったなし」であるという原点を踏まえて、背水の陣で、いくらまで下げることができるか?ということで、考えていきます。

例えば、外注先に対して、今までは、「何とかもう少し安くなりませんか?」という言い方で、交渉していたとするならば、今度は、「もし、これだけでやってもらえなければ、うちとしても、商売自体が成り立たないんです。この厳しい局面を、お互いに乗り切るためには、これしかないんです。今後もお互いに生き残るために、何とか協力してもらえないか・・・」といった交渉に切り替える訳です。

ALL OR NOTHING で、真剣に交渉すれば、相手としてもある程度は、協力せざるを得ないはずです。

ポイント2:仕入、外注費については、これでなければやっていけないという、背水の陣の交渉を行う。基本的には最低10%以上のダウンを目指す。

さて、次に、社内のコストをカットすることを検討していきます。この場合の基準は、もし、お客様への商品、サービスの提供に、直接影響しにくいものは、極力カットするという事です。

基本的には、無くてもなんとかなるものは、この際、全て0にしてしまうという事を、目指して下さい。(0にした中で、どうしても困ったものだけ、あとで復活すればいいのです。)

ポイント3:間接費のカットについては、無くても何とかなるものは、全てカットする方向で行う。

◆さて、経費カットの最大のやまばです・・・

最後に、いよいよ直接費(人件費)に移ります。

これは大変難しいですが、実際の所、儲かっていない会社ほど、直接費(人件費)の割合は高いことが多く、ここに手をつけないと、話にならない場合が多いのも事実です。

以下のやり方を参考にしていただければ幸いです。

①まずはワークシェアリングの考え方で臨む。
いきなり解雇するのは、残った方のモチベーションにも影響します。従って、まずは、会社の苦しい実状をきちんと伝え、何とか全員を残す代わりに、一律○%カットで協力して欲しい旨を、腹をわってお願いする。

②社長のカット率は、当然一番!
取引金融機関を納得させるためにも、従業員を納得させるにも、社長の給料を、一番カットするのは当然です。「俺は給料を半分にして、みんなの3倍働くから、みんなも給料2割カットで、何とか協力してくれ」と言われて、つまらないという、従業員さんは、殆どいないはずです。

③結果がでなければ、次にはもう一段のリストラを敢行する。
もし、上記の策を打ち出し、それでも結果(利益)が思うように上がらなければ、その時には、貢献率の低い人から辞めて頂くしかありません。ここで大切なのは、最初のカット時に、もし一定期間成果が現れなければ、会社を存続させるには、これしかないのだということを、きちんと伝えておれば、いきなり解雇するよりは、かなり納得度は上がります。

④解雇だけではなく、変動費化というのもある。

無理に解雇というのでなく、仕事があるときだけ働いてもらう、パート化というのもありです。こうすれば、その人の給与は固定費から変動費に移るため、売上が減っても赤字原因にはなりません。

とまあ、このような過程を経て、「リストラ後の損益予想数字」が出るわけです。

◆最後に、このリストラで良いかどうかの突き合わせです・・・

さて、問題は、この予想利益で、最初に立てた、「金融機関を納得させる、利益キャッシュフロー」が、出ているかということです。もし出ていれば、これで一応の再建計画書ができたという事になり、それに合わせた付属資料(キャッシュフロー計画書、中期バランスシート予想表等)を作って行くわけです。

もし出ていなければ、もう一度リストラ計画を、やり直していく必要が有るわけですが、ここで全く話にならないようであれば、別の方法(法的整理や、M&A等の外科手術)も考えていかなければならなくなる訳です。
                 
( 続 く ・・・ )

※次回は、「金融機関交渉」について、説明いたします。

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