今回からのテーマは『荷主の動向を掴む』です。
一言に「荷主の動向を掴む」と言っても、どういった着眼点で、どういったことを捉えていくべきなのか、悩まれる経営者様も多いのではないかと思います。
今回は、実際に荷主の置かれる業界動向や荷主の事業展開から、自社の事業展開を構築している企業を例に見ていきたいと思います。
顧客課題を解決するため倉庫業に参入
例とするH社は、一般貨物を扱う運送業者様ですが、運送業に加えて倉庫業も営んでいる企業です。
当初、H社は倉庫業を営んでおらず、近くに製紙工場を構える主要顧客K社の倉庫に従業員を派遣し、トラックへの荷物の積み降しや倉庫の管理を行っていました。
H社が自社で倉庫業を営むようになったきっかけは、K社内の倉庫だけではキャパが足りなったことにあります。
当時の製紙業界は、まだまだ生産量が伸びていた頃で、K社も工場や生産量を拡大していました。
K社のこうした動向を掴み、他社よりも早くK社へ提案し、協議のうえ、H社は倉庫業への参入となったのです。
加えて、H社のドライバーが〔K社工場〕⇔〔H社倉庫〕⇔〔配送先〕と巡ることで、K社にとって物流部門に代わる役割を担うようにしたのです。
弊社がH社と出会ったのは、倉庫業に参入してからしばらく経ってからですが、現在でも、K社の物流拠点として重要な役割を担いながら、成長を続けています。
製紙業界の生産量や需要量は減少傾向にありますが、K社は板紙や特殊な紙を生産し、新技術により商品ラインナップを増やそうとしており、H社はそんなK社の動向を捉え、需要増加に対応するために再び新倉庫を建設しました。
途中、機械の不調によりK社の製造が遅れるというトラブルが発生しましたが、H社は製造が遅れているK社の状況に対して、機械の調整中に材料を保管しておく場所が必要ということを捉え、それまで対応していた製品のみの保管に加え、材料保管庫としても活用してもらえるように提案しました。
原紙は、巨大なロールで傷が付きやすく、かなりの重量です。保管も運搬も運送も、経験がものをいいます。
K社の工場内で、長年仕事を続けてきたH社だからこそできる提案により、一時心配されたK社の機械トラブルによる「倉庫の稼働ゼロ」という事態を避けることができたのです。
荷主あっての運送業であり、倉庫業であるため、荷主次第で状況は左右されてしまいます。
取り組み事例の成功ポイント
H社のポイントは、顧客企業の外部環境、内部環境、それらを受けた次の展開や潜在的なニーズを把握し、自社にとって少しでも好条件となるような対策を取り、提案していることです。
加えて、それまでに培ったノウハウを新たな顧客につなげようとしていることもH社のカギとなっていると考えています。
これについては、次回、改めて取り上げていきたいと思います。