改善の基本は現場の観察【今日から実践!基本からの生産管理・第14回】

前回は、外注先の協力体制を構築してクレームを減らしたA社の事例をご紹介しました。
今回は、現場観察の重要性について考えてみましょう。

 

改善のポイントは「本当の問題」を見つけること

生産現場における改善では、生産性やサービスの向上を目指して仕事の手順ややり方を変えていきます。
改善の手順としては、まず「問題」を見つけ、そして「どのように変えるか」という解決策を考えることになります。
では、「問題」はどのようにして見つければ良いのでしょうか。

「問題がないのが問題だ」という言葉がありますが、現場で意見を聞くと、問題があるにもかかわらず「問題はありません」という反応になることがあります。
長年、同じ業務を継続していると、これまでの状況や作業方法が当たり前となり、「問題に気づかない」ようになってしまうことが多いためです。

「問題」とは、現状とあるべき姿とのギャップですから、生産性などのデータを分析すれば、どこが目標に達していないかは見つけることができます。
しかし、これは「結果として表れている問題」です。
この問題を解決するためには、その裏にある「本当の問題」を見つけなければならないのです。

 

現場観察の重要性

改善活動において難しいのが、この「本当の問題」を見つけることです。
データを分析するだけでは、「本当の問題」は分からないからです。

そこで重要なのが現場の観察です。
現場を観察する際には、「なぜこのようにしているのか」「なぜこうなっているのか」を考えながら冷静に観察することが大切です。
先入観を持たずにじっくりと現場を観察することで、無駄な作業や動作、手待ち、トラブルの種などを感じることができるのです。

しかし、それですぐに「本当の問題」が特定できる訳ではありません。
観察できるのは、目の前の現象であり事実だけです。

そこで、「これが本当の問題かな?」と感じたことをデータに取り、そして分析し、さらにあるべき姿を描いてみます。
このように問題意識を明確にした上で、再度観察することで、「本当の問題」が見えてくるのです。

 

現場観察の工夫

現場を観察する時は、単に目で見るだけでなく、写真やビデオで撮影することも効果的です。
現場を離れてから落ち着いて見直すと新たな発見があったり、ビデオ撮影をすれば、仕事の流れを再確認したり作、業時間の測定も行いやすくなります。
さらに、自分で実際に作業を行ってみることで問題に気づくこともあります。

 

問題発見力を高めるために

「本当の問題」を見つける力を高めるためには、多くの現場を見ること、そして「何が問題か」を考えることの経験の積み重ねが重要です。

一見、問題のなさそうな現場でも「問題がない」ことはありません。
「現場は問題の宝庫」です。先入観を取り払って「何が問題か?」を冷静に観察してみましょう。

次回は、生産現場の観察で問題を見つけたZ社の事例をご紹介します。

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この記事の執筆者

澤田 兼一郎
(株式会社みどり合同経営 代表取締役/中小企業診断士)

立命館大学経済学部経済学科卒業、第二地方銀行を経て当社に入社。中小企業を中心に、経営計画や事業計画の実行性を高める、現場主義のコンサルティングを実施。
特に中小建設業、製造業の経営管理体制の構築、実行力を高めていく組織再構築等のノウハウ等について評価を受ける。

犬飼 あゆみ
(株式会社みどり合同経営 取締役/中小企業診断士)

一橋大学法学部卒業、大手自動車会社のバイヤー(部品調達)として勤務後、当社へ入社。
企業評価における事業DDのスペシャリスト。事業DDでの経営課題の洗い出しをもとに、事業計画や経営計画(利益計画&行動計画)の策定・実行支援が専門分野。

この記事のアドバイザー

阿部 守 先生
(MABコンサルティング 中小企業診断士/一級建築士 )

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