前回は、A社の概要と売上予測の改善事例について解説をしました。
今回は、生産数量を決める考え方をご紹介します。
生産計画の検討
内示情報を生かして確度の高い売上予測ができるようになったBさんは、生産数量を決めるために次のように考えました。
・まず、売上予測から翌月・翌々月の出荷数量を見込み、在庫数量と対比して翌月の生産数量を算出します。
・A社の工場では多くの品種をロット生産しているため、次の生産品が入庫されるまでの間、出荷に対応できる在庫を常に持っていなければなりません。
・月に1回の生産を行う場合は、すべての品種について、月末時点で翌月使用する分の在庫(1か月分)があれば良いことになります。
・ところが、ぎりぎりのやりくりを行ってきたA社では、月末に1か月分の在庫を持とうとすると、現状より在庫数を大幅に増やさなければなりません。これでは、在庫のアンバランスをなくして欠品を防ぐという、当初の目的が達成できません。
・月に2回の生産を行う場合は、月末に翌月の前半に使用する分の在庫(0.5か月分)があれば良いことになります。しかし、この方法ではロットの小さくなる品種が多く発生し、工場でのジョブチェンジも多くなります。その結果、工場での生産効率が大きく低下してしまうのです。
次の問題にぶつかってしまいました。
ABC分析の活用
そこで、Bさんは、生産している全品種について、出荷数量でのABC分析を行ってみました。
全100品種のうち、毎月の出荷量の多い上位20品種をA、次の30品種をB、出荷の少ない50品種をCとしました。
そして、A・B・Cに分けて月間の生産回数と目標在庫レベルを変えることにしたのです。
一般的な考え方では、出荷の少ない品種は在庫を少なくしようとしますが、そうすると小ロットでの生産を繰り返さなければならなくなります。
また、多く出荷される品種の在庫を多くすると在庫数がとても多くなってしまいます。
そこで、Bさんは、A品目については月2回の生産として在庫目標を0.7か月分、B品目については、月1回の生産で在庫目標を1.5か月分、C品目については1.5か月に1回の生産で在庫目標を2.0か月分としました。
出荷数量の多い品種は限られていることと、月2回に分けて生産してもロットの大きさが大きいので、工場でのジョブチェンジの負担は大きくありません。
出荷数量の少ない品種は、在庫を2か月分持ったとしても、全体の在庫数量への影響は軽微です。
しかも、1.5か月に1回の生産とすることでロットの大きさが大きくなりますから工場の生産効率も上がります。
A社の生産計画の方法と成果
このようにして在庫レベルを設定することがでたので、基本的には使った分だけを補充する方式としながら、売上予測も活用して生産数の微調整を行う生産計画方法としました。
そして、ABC分析の考え方を取り入れたことで、従来よりも全体の在庫数を20%削減し、しかも欠品の危険を無くすことができました。
Bさんは、目標であった、在庫のアンバランスを無くして解決することができ、しかも、ルールを明確にするすることで、だれでも生産計画を作成することができるようになりました。
みなさんの工場では、生産計画のルールは決まっていますか。
次回は、「外注管理で大切なこと」について考えてみましょう。
関連サービス
動画で分かりやすく解説!おすすめコンテンツ
関連サービス
動画で分かりやすく解説!おすすめコンテンツ
この記事の執筆者
澤田 兼一郎
(株式会社みどり合同経営 代表取締役/中小企業診断士)
立命館大学経済学部経済学科卒業、第二地方銀行を経て当社に入社。中小企業を中心に、経営計画や事業計画の実行性を高める、現場主義のコンサルティングを実施。
特に中小建設業、製造業の経営管理体制の構築、実行力を高めていく組織再構築等のノウハウ等について評価を受ける。
犬飼 あゆみ
(株式会社みどり合同経営 取締役/中小企業診断士)
一橋大学法学部卒業、大手自動車会社のバイヤー(部品調達)として勤務後、当社へ入社。
企業評価における事業DDのスペシャリスト。事業DDでの経営課題の洗い出しをもとに、事業計画や経営計画(利益計画&行動計画)の策定・実行支援が専門分野。