前回は、ボトルネックを改善して生産性を大幅に向上させた事例をご紹介しました。
今回は、生産計画の立て方について考えてみましょう。
生産計画とは
生産計画とは、生産品目と生産量、生産時期を計画するものです。
お客様の要求納期を満たしつつ、製造原価が少なくなるように、いつ、何を、どれだけ、どのような体制で生産するかを決めます。
生産計画には、長期の大日程計画と月次の中日程計画、そして週次や日ごとの小日程計画があります。
大日程計画では生産能力や設備投資の計画を立て、中日程計画では資材調達や人員計画、外注計画を立てます。
そして、小日程計画で具体的な品目と数量、そして生産スケジュールを決めるのです。今回は、この小日程計画について考えてみます。
一般的な生産計画の立て方
生産の方式には、受注生産と見込生産があります。
受注生産は、文字通り、受注した注文を生産する方式です。この場合は、注文を受けたオーダーを納期の早い順に生産します。
生産能力に余裕があれば、同じ生産品目で納期の遅いオーダーをまとめて作ることもありますが、余裕が無ければ、納期の早い順に作るのが原則です。
生産品目の中には、特殊な加工が必要であったり、外注工程が必要など、生産期間が均一な商品ばかりではありません。
その場合は、生産期間の長くかかるものは、長くかかる期間分だけ、他の商品より早く作り始めます。
見込生産は、注文を予測して生産する方式です。受注後の納期が短く、受注してから生産したのではお客様の希望納期に間に合わない場合に行います。
注文の予測は、過去の趨勢や、現在・将来の市場動向、お客様から頂く予測情報などを元に行います。
生産計画担当者の悩みと問題点
このような業務を行う生産計画の担当者は、実はいろいろな悩みを抱えています。
・受注生産の注文が集中して納期に遅れそうになる。
・逆に、注文が少なくて工場稼働率が低下してしまう。
・見込生産の予測がはずれて在庫が増えたり、不足したりする。
・受注生産品と見込生産品の両方を生産しているため、どのような順番で生産すれば良いか分からなくなる。
・生産計画を立案するのが、「1回/月」などのように決まっているため、出荷の情報や注文の情報にタイムリーに対応できない。
などです。
見込生産の生産計画の考え方
今回は、見込生産品の生産計画について考えてみます。見込生産の場合は、予測がはずれて混乱することが良くあるためです。
この問題に対して私がお勧めしているのは、基準在庫に対して出荷した分だけを生産する補充方式を採用することです。
具体的には以下のような手順で行います。
・過去1年間の出荷量データを元に、月間の平均出荷量を求めます。
・この工場の生産計画立案のタイミングを確認します。(月に1回、半月に1回など)
・月に1回であれば、基準在庫を1.5か月分、半月に1回の生産計画立案であれば、0.8か月分というように定めます。この基準在庫量は、生産が終わった直後の目標在庫量となります。
・平均的な出荷であれば、月に1回の生産計画の期間中に1か月分を出荷してしまいますから、生産計画立案時に0.5か月分の在庫が残っていることになります。これは、出荷の変動に対する余裕分となります。実際の出荷が多ければ、在庫が少なくなっていますし、出荷が少なければ在庫が多く残っています。
・生産計画を立てる時は、原則としてその前の1か月間に出荷した数量をそのまま生産数とします。半月ごとに生産計画を立てる場合は、直前の半月間に出荷した量が生産数となります。
・生産の順番は、計画立案時に、直前の出荷数に対する在庫量の余裕が少ない品目を優先にします。
この補充方式を用いれば、出荷予測が不要になるため、予測の精度が悪いといって、営業と製造が争うようなこともなくなります。
次回は、この方式を活用して、生産計画の混乱をなくし、在庫量を大きく減らした工場の事例をご紹介します。
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この記事の執筆者
澤田 兼一郎
(株式会社みどり合同経営 代表取締役/中小企業診断士)
立命館大学経済学部経済学科卒業、第二地方銀行を経て当社に入社。中小企業を中心に、経営計画や事業計画の実行性を高める、現場主義のコンサルティングを実施。
特に中小建設業、製造業の経営管理体制の構築、実行力を高めていく組織再構築等のノウハウ等について評価を受ける。
犬飼 あゆみ
(株式会社みどり合同経営 取締役/中小企業診断士)
一橋大学法学部卒業、大手自動車会社のバイヤー(部品調達)として勤務後、当社へ入社。
企業評価における事業DDのスペシャリスト。事業DDでの経営課題の洗い出しをもとに、事業計画や経営計画(利益計画&行動計画)の策定・実行支援が専門分野。