前回は、生産計画の立て方として補充方式の考え方を解説しました。
今回は、この方式を活用して在庫を減らした事例をご紹介します。
A社の概要
A社は外壁建材製造会社です。
工場で生産した基材を外注先に出荷し、外注先で塗装と加工を行ってハウスメーカーに納入しています。
ハウスメーカーからA社には、住宅の1棟単位でオーダーがきます。
住宅工事の現場では、外壁を取付けるだけで工事が進むように、住宅の設計に合わせて、加工済の外壁建材をパーツとして納入するのです。
住宅のモデル(種類)によって外壁の柄や色が異なるだけでなく、住宅の大きさや形が個々で異なるため、オーダーの内容は千差万別です。
A社から外注先に出荷する基材は、100種類程度ですが、外注先で加工する最終的な商品の種類は、数万種類と膨大な数になります。
生産計画担当者の悩み
Bさんは、A社の新任の生産計画担当者です。
外注先からの「早く基材を入れてくれ」との督促に悩みを抱えていました。
営業からの売上予測情報をもとに生産計画を立てているにもかかわらず、欠品になりそうな綱渡り状態が続いていたからです。
しかも、欠品になりそうな基材がある一方で、在庫が多くある基材もありました。
A社でも工場での生産品目の急な変更は、工場管理者から最も嫌がられ、なかなか受け入れてもらえません。
営業・外注先と工場との間に挟まったBさんの悩みは深まるばかりでした。
この問題を解決するためには、もっと多くの基材を生産して在庫を増やせば良いのですが、工場の生産は3交代24時間体制でのフル生産状態で、これ以上生産数量を上げることは不可能でした。
「在庫のアンバランスを無くして解決するしか方法はないが、どうすれば良いだろう?」とBさんは考えました。
売上予測の問題点
Bさんは、まず、営業の売上予測に問題があるのではないかと考えました。
営業は、お客様であるハウスメーカーから内示情報を入手しています。
ハウスメーカーからは、数カ月先まで、Xモデル、Yモデル、Zモデルなどの住宅のタイプ別・月別に出荷予想棟数が示されていて、この情報は毎月更新をされていました。
ハウスメーカーの商品は高額な住宅ですから、施主も慎重に決断しますし、建築の日程も計画から大きく変わることはありません。
したがって内示情報と実際のオーダーは大きくずれることはありませんでした。
ところが、営業ではこの貴重な情報が活用されず、売上予測は営業担当者のカンによって作成されていました。
営業では、内示で入手する「○月のXモデル△棟」という棟数の情報と、毎日来る多くの物件の多品種のオーダーを結び付けて考えることができなかったのです。
そこで、Bさんは過去のモデル毎のオーダーを調べ、1棟あたりの平均的な必要基材数を算出しました。
必要基材数はもちろん基材の種類別に算出しました。
これをもとに、過去の内示情報と、外注先への基材出荷数を比較してみると、あまりずれていない事がわかりました。
内示情報を生かして確度の高い売上予測情報を得ることができるようになったのです。
次にBさんが取り組んだのは、基材品種ごとの生産数量決定のルールです。
必要な情報をインプットすれば、生産計画が出来上がる仕組みを作ることにしました。
だれでも生産計画が作成できるようにしようと考えたのです。
次回は、Bさん考えた生産数量決定のルールをご紹介します。
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この記事の執筆者
澤田 兼一郎
(株式会社みどり合同経営 代表取締役/中小企業診断士)
立命館大学経済学部経済学科卒業、第二地方銀行を経て当社に入社。中小企業を中心に、経営計画や事業計画の実行性を高める、現場主義のコンサルティングを実施。
特に中小建設業、製造業の経営管理体制の構築、実行力を高めていく組織再構築等のノウハウ等について評価を受ける。
犬飼 あゆみ
(株式会社みどり合同経営 取締役/中小企業診断士)
一橋大学法学部卒業、大手自動車会社のバイヤー(部品調達)として勤務後、当社へ入社。
企業評価における事業DDのスペシャリスト。事業DDでの経営課題の洗い出しをもとに、事業計画や経営計画(利益計画&行動計画)の策定・実行支援が専門分野。