一体感を作る5つのポイント
(1)経営者が考え抜いた上で経営計画を作り、社内に向けて目標と達成に必要な行動計画を明確に示したこと。
(2)会議等(情報共有)について、具体的には、検討事項、管理資料、参加メンバーを目的に基づいて常に見直し、修正してきたこと。
(3)キーマンを明確にしたこと(実弟の部長とキーマンの新部署の部長への登用)。
(4)取締役の動機付け。
(5)かつて信頼していた部長の定年退職と新卒3名(男性2名、女性1名)の採用。
今回からは、「(1)経営者が考え抜いた上で経営計画を作り、社内に向けて目標と達成に必要な行動計画を明確に示したこと。」について見ていきます。
第1回に登場した、2代目経営者の企業様の事例を参考に説明をしていきたいと思います。
実際に支援をスタートしてから、経営計画が出来上がるまでに約6ヶ月の時間を費やしました。
まずは、私どもは、事業面の調査として、幹部、従業員のヒアリングをスタートし、会議の出席や、製造の現場など様々な側面から事実確認を行っていきました。
その上で、経営者の方と何回にもわたる打ち合わせを行い、経営者の考える長期的な方向性や目標と、現実とのギャップを明確にしていきました。
現状把握と課題抽出
同時に財務面の調査も行い、過去の収益力の検証や、実態の資産や負債の状況を明らかにしていきました。
その現状把握と課題の抽出で約3ヶ月間をかけ、そこから、経営者と、利益計画と行動計画についてほぼ毎週、3ヶ月間かけて内容を詰めていきました。
ここでのポイントは、計画を実際に策定していく上で、毎週経営者と丸一日時間をかけて検討していったということだと思います。
具体的に一番時間をかけたのは、カテゴリー別の売上高限界利益計画(売上高粗利計画)と人員計画です。
この2つを詰めるのに、計画策定期間(3ヶ月)の半分以上の時間を費やしたと思います。
理由は、既存の分野に加えて、新たな分野を開拓し、売上を上乗せしていかないと、会社が存続できず、それを実現する為には、新たな組織体制(配置転換や若返り)を作って、実際に動かしていく、計画を策定する必要があることを、経営者自身が認識していたからです(経営計画策定前に、事業面及び財務面の報告を経営者の方にしていることも大きく影響していると考えられます)。
今考えると経営者は、自社の経営資源での実現可能性と社内に発表する為の根拠(要はどのような質問が来ても答えられる準備)をその期間、死ぬほど考えていたと思われます。
社内への発表
社内に発表した時に、絵に描いたような盛り上がりはありませんでした。
利益計画の目標値を高めに設定していたことなどもあり、「何を根拠に!?」という営業責任者の言葉や当事者意識のない冷ややかな反応でした。
また、実行支援の過程の会議の中でも、利益計画のハードルの高さから「根拠がない!」「実現性がない!」など反応が経営者に向けて投げかけられました。
だからといって頭ごなしに何かを押し付けることはしませんでした。
会社が生き残っていく、将来成長をしていく為には、この計画の実行が必要であることを、繰り返し説明をしました。
また、途中で経営者としての考え方を5つにまとめ、行動指針として徹底するように発表しました。
今でもすべての会議のスタートの時には、全員で唱和し、社内には「社長方針」として明示されています。
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この記事の執筆者
澤田 兼一郎
(株式会社みどり合同経営 代表取締役/中小企業診断士)
立命館大学経済学部経済学科卒業、第二地方銀行を経て当社に入社。中小企業を中心に、経営計画や事業計画の実行性を高める、現場主義のコンサルティングを実施。
特に中小建設業、製造業の経営管理体制の構築、実行力を高めていく組織再構築等のノウハウ等について評価を受ける。