そもそも一体感ってなんでしょうか【組織活性化、経営計画の実行性を高めるポイント「一体感」について考えてみる・第1回】

中小企業の経営のご支援をさせて頂いている中で、ここ数年で「伴走支援」というワードが出てきました。
中小企業の公的支援事業中でみると、中小企業活性化協議会(旧中小企業再生支援協議会)の「経営改善計画策定支援事業(通称:405事業)」の中で計画策定後の「モニタリング」という支援内容から「伴走支援」へ変更になっている点からも見てとれます。

伴走支援とは平たく言うと、「計画の策定やスキーム提案だけではなく、その後も一緒に結果が出るように専門家(プロコン)が支援をするように」ということです。

つまり、中小企業のご支援をしている私どもも結果責任の一部を問われてくる時代になってきています。
そうした実際の経営支援、実行支援の中で、実行性を高める一つのポイントとして考え、常に意識しているのは、組織に一体感があるのか、という点です。

当然と言えば当然ですが、策定した経営計画の実行は、経営者だけが動くだけでは結果は出ず、組織として動いて初めて、組織(会社)として結果が出てきます。

 

中小企業経営における「一体感」とは?

そもそも中小企業様の経営にとって、一体感とは何でしょうか。

個人的には、一つの組織体としてトップが掲げた共通の目標に向かっていく姿ではないかと思っています。
その姿になるためのベースは、経営者と幹部、従業員の方々との信頼関係です。

 

事例企業の現状

事例企業の経営者は、2代目で、ご支援をスタートした時には、経営者が信頼する幹部1名(部長)がいました。
また、2名の取締役は、今は亡き創業者である先代が取締役に任命したもので、現在の経営者が入社した時から、幹部でいた方です。
第三者の目から見て、2名の取締役と経営者との関係は信頼関係があるようには見受けられませんでした。

しかしながら、その2名は所謂、稼ぎ頭の部署の部長も兼務しており、その部署の従業員からは信頼されていました。
当時の会社は、幹部会議といえども、経営者が信頼している部長が一人で仕切り、他の部長の発言もほとんどない、単なる報告会でした。

会社にも活気はなく、経営者自身も、どのように幹部の意識変革ややる気を引き出すのか迷っていました。
もちろん、業績も数年低迷しており、実質的には赤字体質が続いていました。

 

ご支援後の状況

それが現在は、当時信頼する幹部としていた部長は定年退職で去り、今は、経営者の実弟の部長と、弊社がキーマンの一人として感じていた方を経営の改革を行う部署の部長に任命し、本音ベースで経営者と議論ができる風土ができつつあります。

そして、今までぎくしゃくしていた取締役との関係も、新たに取締役会を毎月開き、今までは、経営者が一人で決めていた経営判断、例えば人事や会社全体の営業方針の相談や、業績結果の報告をその場で議論しています。

そして、そこから出てくる課題への取り組み方針を、だれが(今までは経営者のみ)各幹部や従業員へ伝えていくのかまで、議論しています。
自然と取締役自身がやる気や責任感を持った発言や行動をされるようになっています。

業績は2期連続で黒字決算でした。そして3期目は経営環境が厳しい中、利益トントンの状況です。

しかし、残された時間の中で、全社一丸なって利益計画の達成に向けて、頑張っている熱い組織(一体感のある組織)になっています。

 

一体感を作る5つのポイント

では、実際に行った取り組みを整理していきたいと思います。
(1)経営者が考え抜いた上で経営計画を作り、社内に向けて目標と達成に必要な行動計画を明確に示したこと。
(2)会議等(情報共有)について、具体的には、検討事項、管理資料、参加メンバーを目的に基づいて常に見直し、修正してきたこと。
(3)キーマンを明確にしたこと(実弟の部長とキーマンの新部署の部長への登用)。
(4)取締役の動機付け。
(5)かつて信頼していた部長の定年退職と新卒3名(男性2名、女性1名)の採用。
の5点です。

次回から5つのポイントを見ていきたいと思います。

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この記事の執筆者

澤田 兼一郎
(株式会社みどり合同経営 代表取締役/中小企業診断士)

立命館大学経済学部経済学科卒業、第二地方銀行を経て当社に入社。中小企業を中心に、経営計画や事業計画の実行性を高める、現場主義のコンサルティングを実施。
特に中小建設業、製造業の経営管理体制の構築、実行力を高めていく組織再構築等のノウハウ等について評価を受ける。

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