「一体感」の必要性と作るポイント【組織活性化、経営計画の実行性を高めるポイント「一体感」について考えてみる・第4回】

一体感を作る5つのポイント

(1)経営者が考え抜いた上で経営計画を作り、社内に向けて目標と達成に必要な行動計画を明確に示したこと。
(2)会議等(情報共有)について、具体的には、検討事項、管理資料、参加メンバーを目的に基づいて常に見直し、修正してきたこと。
(3)キーマンを明確にしたこと(実弟の部長とキーマンの新部署の部長への登用)。
(4)取締役の動機付け。
(5)かつて信頼していた部長の定年退職と新卒3名(男性2名、女性1名)の採用。

今回より、「(4)取締役の動機付け」について見ていきます。


取締役の動機付け

「取締役の動機付け」とは、取締役や幹部の方に『やる気を持って仕事に取り組んでもらうのか』ということに加え、『会社の価値・理念を身につけてもらい』、その基準のもと、『あらゆる局面で適正に判断できるということ』だと思います。

取締役、幹部が動きだすことで、会社や経営者が示した方針や目標がスムーズに、現場で働いている従業員の方へ伝わり、そして実行されていきます。
また同時に、会社としての考え方や風土・価値が、末端の従業員まで浸透していくことになります。
つまり、目には見えませんが、一体感が作られていきます。

しかしながら、このことは簡単なことではありません。

先の事例企業様のように、社長方針を示し、取締役会を開催し、キーマンを新たな部署に登用することで、取締役や幹部の存在価値を認めることとなり、責任感ややる気が作られる場合もあります。

では、すべての中小企業様にこれが当てはまるのかというと、決してそうではありません。
企業ごと、経営者ごと、そして取締役、幹部ごとに、そのやり方は違ってくると思います。

ここで少し、時間がかかっている事例を簡単に紹介します。


事例で考える

この企業様は、4代目の経営者で前経営者の娘婿です。
現時点では、前経営者が会長職として残っています。

そして、先の事例企業同様に、調査から経営計画の策定までをご支援しました。
しかしながら、将来の行動計画の実行が思わしくありません。

原因は、経営者と幹部の関係です。
つまり幹部の方が新しい経営者の考え方ややり方を理解はしているものの、前向きに捉え、自ら行動する段階までにはいっていないからということだと思います。

現状、売上は、前の状態と変わらず先代経営者や現経営者の個人的なつながりで作っている状態です。
外部支援者の目から見ても決して、幹部や従業員の方の実力が低いということはありません。

しかも、先代が経営者であったときには、新しい事業をゼロから立ち上げ、現在は収益の柱までになっている、新しいことに取り組み柔軟性と挑戦する気持ちも持っています。

また、今の経営者の人間性や仕事に対する姿勢も、外部支援者から見ても、特に問題があるようには見えません。


先代経営者の影響を理解する

ではその原因は何かというと、今の経営者の考え方や幹部への接し方にあると思われます。
要は、今の経営者が、先代の経営者(歴代の一族経営者の経営のやり方)の考え方や幹部の方への接し方、方針の示し方を、認めることが必要だと思います。

具体的には、長年培われてきた、この企業の風土、価値をきちんと感じとり、取締役や幹部、従業員がどのような基準で、日常の仕事をこなし、判断しているのかを、見極めるということだと思います。

それを尊重した上で、自分自身の考え方や判断基準を、取締役や幹部の方に、時間をかけて伝え、示していくように、接し方を意識することで、少しずつ変化していくのではないかと思います。

しかし、現実は、今の経営者が企業の風土や価値、理念を理解するようには、進みません。
それは、今の経営者の先代経営者に対する、批判的な感情です。

その理由は、業績が厳しくなっている一因を先代が作っているからです。
そのことは事実ですが、今事業を支えている、新しい収益の柱を作ったのも先代です。
どうしても、業績の悪化の原因である先代への非難ばかりに目が行ってしまうのです。


行動計画が進捗しない理由と解決策

但し、取締役、幹部の方の大半は、先代やその前の経営者の姿を見て、前の経営者に仕えてきました。
それが、取締役、幹部の方が考えるスタンダードな経営者像になります。

つまり、取締役、幹部の方は、その経営者、会社の価値、理念、考え方に共感して、日々会社のために、働いてきていることになります。
ですから、前の経営者に対する批判的な態度は、長年培われた価値や風土とは、まったく違うものを現経営者は発信することになり、取締役、幹部の方からすると、今の経営者が何を考えているのか分からなくなってしまいます

解決策は、やはり時間をかけて、現経営者が会社の歴史を冷静に振り返り、前経営者の功罪を冷静に棚卸し、会社の強みと風土を見極める時間をつくることだと思われます。

数年後現経営者は、前経営者の娘である自分の妻を会社の管理部門(経理や人事)の責任者に登用(以前はパート事務員)し、全体のマネジメント業務を妻を通じて行うように体制を変更しました。

実際、前経営者の背中を見て育っているため、幹部との意思疎通もうまく回りはじめ、金融機関からの協力な支援も取り付けることができ、その後堅調な業績を残しています。

この記事の執筆者

澤田 兼一郎
(株式会社みどり合同経営 代表取締役/中小企業診断士)

立命館大学経済学部経済学科卒業、第二地方銀行を経て当社に入社。中小企業を中心に、経営計画や事業計画の実行性を高める、現場主義のコンサルティングを実施。
特に中小建設業、製造業の経営管理体制の構築、実行力を高めていく組織再構築等のノウハウ等について評価を受ける。

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