「一体感」の必要性と作るポイント【組織活性化、経営計画の実行性を高めるポイント「一体感」について考えてみる・第3回】

一体感を作る5つのポイント

(1)経営者が考え抜いた上で経営計画を作り、社内に向けて目標と達成に必要な行動計画を明確に示したこと。
(2)会議等(情報共有)について、具体的には、検討事項、管理資料、参加メンバーを目的に基づいて常に見直し、修正してきたこと。
(3)キーマンを明確にしたこと(実弟の部長とキーマンの新部署の部長への登用)。
(4)取締役の動機付け。
(5)かつて信頼していた部長の定年退職と新卒3名(男性2名、女性1名)の採用。

今回は、「(3)キーマンを明確にしたこと(実弟の部長とキーマンの新部署の部長への登用)」について見ていきたいと思います。


キーマンの資質とは?

中小企業様には、キーマンと言われる幹部もしく従業員の方が必ずいらっしゃいます。
キーマンとは、得意先や取引先、そして従業員の方からも一目おかれ信頼され、企業にとっての強みとなる基盤を作っている方で、時には経営者と衝突してでも、会社を引っ張っていこうとする人だと思います。

その資質としては、努力家で、知恵があり、また常にフェアーな視点に立って、人の意見を聞く姿勢を持ち、その上で、筋を通す精神的な強さを有していることではないかと、個人的には感じています。

実は、キーマンの方が、本当にキーマンとして働いていらっしゃるのかというと、そうではない場合が結構あります。
事例企業でもそうですが、もともと経営者が認めていたキーマンと、私どもの目から見たキーマンとは違いました。

理由は、全社的な目線、経営者の視点で経営について考えているのか、いないのかだと思います。

事例企業の経営者も含めて、多くの中小企業の経営者が、日常の営業や管理業務等に忙殺され、きちんと全社的な目線、経営者の視点で物事を考える余裕、時間を失っています。

そうなると、経営者も、多忙で効率よく仕事を進めることを優先し、指示したことをただやってくれる、受身の方をキーマンとして見てしまう可能性が出てくると思います。本来なら幹部の方が自ら考え、営業等の業務に責任感を持って動くという、自発的な行動が消されている可能性があります。


キーマンを明確にする

私どもは幹部、従業員のヒアリングからスタートしキーマンを見つけだすことに加え、強みや弱み、問題点や課題をきちんと確認する為に行うことにしています。
そして、それをもとに、経営者の方と、経営者の考える方向性や目標に照らして、何が課題で、何をすべきかを議論していきます。

ここで、経営者の考えるキーマンと私どもが現時点で考えているキーマンとを明らかにします。
一致しない場合は、もう少し時間をかけてすり合わせをしていくことになります。

重要なことは、経営者の方が、今後、キーマンをうまく活用していくことで、経営者の方自身が納得した上で、キーマンを認めていくことだと思います。

経営者と私どもの具体的なすり合わせのために、中小企業様の様々な会議に参加させて頂き、キーマンの方の発言やその発言に対する他の出席者の反応や意見を確認していきます。
また、キーマンの方がやっている仕事内容や周りの従業員の方とのコミュニケーションの状況などを、細かく情報収集していくことにしています。それを繰り返し行っていきます。

私ども自身もこのような時間を経て、本当に会社にとって重要なキーマンがだれかを、経営者と目線合わせを行っていくことにしています。
経営者とともに、じっくり考え、そしてキーマンにやって頂くこと、組織上の役職等を決定し、会社のキーマンとしての位置付けを決定していくことになります。


価値観の共有

事例企業では、約6ヶ月かけて、幹部や従業員の方へのヒアリングをスタートに、調査を行った上で(財務面も同様です)、経営計画を策定しました。
そして、その後は会議開催の支援や、経営管理資料づくり、営業活動の体制づくりなどの、実行支援(伴走支援)をさせて頂いています。

実際に、私どもがキーマンとして考えていた2人が、新しい部署の部長への登用や経営幹部会議や取締役会へのオブザーバーとして参加をして頂けるまで、支援をスタートしてから約1年半かかっています。

時間がかかる理由は、先述したとおり人事権の活用の重要性のとおり人事や組織をダイナミックに動かすことは、経営の改善や改革に必要であり、効果的な施策ですが、ほとんど毎日顔を突き合わせて一緒に仕事をしている所謂、中小企業様にとっては、慎重に実行しないと、取り返しがつかなくなる可能性が高くなるからです。

特に創業者でない経営者の場合(つまり2代目、3代目の経営者)は、一回失敗してしまうと、幹部や従業員の方からの信頼が二度と回復しない場合があると、現場でご支援させて頂いている中で感じています。

また、もう一つの大きな理由として、会社(経営者)の考え方、価値観をきちんと共有していただく時間が必要だということだと思います。

もちろん、今まで働いてきている中で、ある程度、会社の風土や価値や理念を共有しています。
しかし、経営者とともに、会社の幹部として、会社を引っ張っていく、新しいことに取り組んでいくためには、さらに強い共感を持つことが必要になります。

その為には、経営者自身も方針を明確にし、日々言動で示し、キーマンに示し続け、つねに価値観を共有していく時間を作っていくことが必要であり、当然一定の時間が必要ということではないでしょうか。

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この記事の執筆者

澤田 兼一郎
(株式会社みどり合同経営 代表取締役/中小企業診断士)

立命館大学経済学部経済学科卒業、第二地方銀行を経て当社に入社。中小企業を中心に、経営計画や事業計画の実行性を高める、現場主義のコンサルティングを実施。
特に中小建設業、製造業の経営管理体制の構築、実行力を高めていく組織再構築等のノウハウ等について評価を受ける。

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