4.株式取得の方法と手続き(2)

今回のテーマは、募集株式の第三者割当増資の手続です。

それでは、前回も簡単にお話ししましたが、もう一度、M&Aで第三者割当増資を行うことを前提に、その手続をみていくことにしましょう。

 

1.募集事項(以下(1)~(5))の決定
 (1)募集する株式の数(種類株式発行会社においては、募集株式の種類および数)
 (2)募集株式の払込金額、またはその算定方法
 (3)金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨ならびに当該財産(現物出資財産)の内容および価額
 (4)金銭の払込みまたは現物出資財産の給付の期日またはその期間
 (5)増加する資本金および資本準備金に関する事項

 

では、これらの募集事項は誰が決めるのかというと、その会社が公開会社かどうか(※)、また、有利発行(払込金額が引受け手にとって特に有利な価額での発行)かどうかで決定する機関が違ってきます。

 

(※)定款で譲渡制限のない株式を発行できるとしている会社は「公開会社」、対して、発行する全部の株式が譲渡制限株式の会社は「公開会社でない会社(非公開会社)」。

 

以下に、それぞれの場合について表にしてみました。表の内容は、次のように考えるとわかりやすいと思います。

 

募集事項の内容は従来の株主の利益(1株あたりの価値や議決権割合など)に影響するので、基本は株主総会決議。
 →けれども、たくさんの株主がいる(ことが予想される)公開会社では株主総会を開くは大変なので、取締役会でOK。
 →ただしその場合でも、有利発行のときは従来の株主にとって不利益になることがある(相対的にですが)ので、基本にもどって株主総会決議。つまり、基本は公開会社でない会社(非公開会社)で、公開会社のほうが特別な扱いといえます。

 

4 第三者割増増資.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.株主への募集事項の通知または公告
公開会社で、取締役会で募集事項を決めた場合にのみ原則として必要になる手続で、払込期日(または払込期間の初日)の2週間前までに株主へ通知(または公告)します。

 

3.募集株式の申込・割当・引受
M&Aの場合のように、引受け手が買い手1社で、募集株式の総数を引受ける契約を結んだときにはこの手続は必要ありません。

その場合以外は以下のような流れで行います。
会社から申込希望者に募集事項を含む一定の事項を通知

 

→申込希望者は書面で申込

→会社は募集株式の割当(割り当てる者と割当株数)を決めて申込者に通知(申込者は引受人となる)

 

4.払込・効力発生
引受人は、全額の払込によって、払込期日(期間を定めているときは払込みをした日)に募集株式の株主になります。

 

今回までのところで、中小企業のM&Aでは、通常よく利用されている株式取得についてみてきました。次回からは、同じく中小企業のM&Aでよく利用される事業譲渡について考えてみようと思います。

 

M&A・企業組織再編部門
公認会計士 原田裕子
執筆者ご紹介 → http://ct.mgrp.jp/staff/

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