2.株式取得について

前回、M&Aにはいろいろな手法があるとお話しましたが、今回はそのうちの株式取得についてみていくことにしましょう。

 

1.株式取得とは
M&Aの手法としての株式取得は、ある会社の株式を取得することによってその会社の経営権を手に入れることを意味します(株式交換や株式移転も広い意味では株式取得ですが、それについては後日みていくことにしてここでは含めずに考えます)。

株式には普通は議決権があります。実際に会社の業務についての意思決定をしてそれを実行するのは取締役ですが、その取締役の選任や解任、その他の経営上の基本的な重要事項は株主総会でこの議決権による多数決で決められます。従って、50%を超える議決権を取得して子会社にすればその会社の経営権(支配権)を手にしたことになります。支配という点では100%子会社にすれば完全ですが、3分の2の議決権か、さらに4分の3の議決権があればほとんどの重要事項を決定できるといってもいいでしょう。
主要な決議事項と原則的な決議要件などについて表にしてみました。

12 決議.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.株式取得のメリット・デメリット
株式取得は、合併や事業譲渡、株式交換などの場合のような煩雑な手続(これらの手続については、次回以降みていこうと思います)を行う必要がありません。特に中小企業の場合、買い手が既存の株式をオーナー一族のみから買取るようなケースでは手続は簡単です。また、支配株主が交替するだけで会社はそのまま存続し権利義務も引き継がれますから、会社がもともと持っている事業に関係する免許なども当然継続します。建設業の場合も建設業許可や経審の点数・実績に影響はありません。

しかし、これらのメリットの反面デメリットもあります。たとえばその会社に簿外債務などがあった場合には、子会社化することによりこれを実質的に引き継いでしまうリスクがあります。さらに、買い手には株式を買取る(あるいは募集株式を引き受ける)ための資金がなければなりません。

今回は、M&Aの手法としての株式取得の意義やメリット・デメリットについて考えてみました。次回は、株式を取得する場合に会社法が定めている手続について、既存株式の取得の場合と第三者割当増資の場合に分けてみていくことにしましょう。

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