今回から、中小企業の経営者の中で、以外と頭の中で整理がついていない、キャッシュフローのことについて、少し、説明していこうと思います。
最初はまず、入門編として、資金繰りについて説明していき、その次に、中級編として、キャッシュフロー経営への転換について、講義を進めて行ければと思っております。
お付き合いの程、よろしく御願いいたします。
キャッシュフロー入門編1・・・企業活動で必要な資金と銀行借入(短期資金:前編)
◆そもそも企業活動で必要な資金の種類ってどんなのがあるの?
まず、最初に考えてみたいのは、企業活動を行う上で、お金が足らなくなる場合(大抵は、銀行借入でまかないますが・・・)は、どんなパターンがあるかという事です。
まずは、短期資金(日々の営業活動で発生する資金需要)を、以下に列記してみます。
1.経常運転資金
これは、企業が、普通に商売を続けていく中で、「経常的に」必要となっている資金のことです。元手の現金が0から始めた場合は、必ず必要になってくる運転資金です。
計算式は、後で詳しく説明しますが、最も単純にいうと、
(売掛債権滞留分)+(在庫維持資金)-(買掛債務留保分) =(経常運転資金)です。
簡単に言うと、売掛債権=売上代金回収を「待ってあげている」お金。
在庫資金=まだ、金にならずに眠っている、「在庫を維持する為の」お金。
買掛債務=購入代金支払を「待ってもらっている」お金です。
すなわち、全てを現金で売り買いして、在庫も持たなければ、運転資金は発生しませんが、払ったり、もらったり、品物で眠ったりする中で、一時的に、お金が足りなくなるパターンが、「運転資金の発生」です。
逆に、殆どの売上を現金でもらっている業種の場合、運転資金は要らないどころか、どんどん先行してお金(現金や預金)が余ってくる場合もります。
<ヒント>つまり、上の項目(売掛債権や在庫等)を工夫して改善してやるだけで、資金繰りは好転するのです。(詳しくは後で説明します。)
2.季節運転資金
年間を通して、売上高が変動する企業に発生する資金需要です。
例えば売上が急に落ち込む時期に、一時的に赤字になるので、その期間だけお金が足らなくなるような場合です。
それ以外にも、賞与の支払いや、納税など、一時的にキャッシュが出る場合もこれに当てはまります。
一時的に足らないが、後で必ず帳尻が合う(返済できる)はずの資金です。
3.スポット資金
特別高額な商品の買い付けであるとか、イベント的な事であるとか、通常のサイクルの仕入以外で発生するものです。
これも、後で必ず、売上代金等によって、戻ってくる資金です。
4.増加運転資金
売上が、右肩上がりで増加中の場合に必ず発生する資金です。
ただ、間違えてはならないのが、現金商売で、資金回収が先行している企業(例えば、上記1.の計算式で、経常運転資金が0以下の企業)は、絶対発生いたしません。
計算式は1.に準じて
(売掛債権増加分)+(在庫資金増加分)-(買掛債務増加分) =(増加運転資金)です。
5.諸条件等の悪化による追加運転資金
売上が増加しなくても、諸条件の悪化により、資金が不足する場合があります。具体的には、以下の3つが大きな原因です。
(1)売掛債権の増加・・・もらえない(待ってあげている)お金が増えることです。もしかしたら、焦げ付きの恐れはありませんか?
(2)在庫の増加・・・在庫の量が増えることです。増えた中に、不良在庫になってしまっているものはありませんか?
(3)買掛債務の減少・・・支払を待ってもらっているお金が減ることです。もしかしたら、取引先に言われるまま、普通よりも早く払いすぎていませんか?
※この5.の資金は、上の(1)~(3)でも述べてますが、不安な要素がたくさん入っている為、借入申込をした場合、銀行が貸すのをいやがる種類の資金です。
基本的には、短期でお金が必要な場合は、上記のパターンで全て(のはず)です。
◆あれ、他にも借りる場合がなかったっけ?
以上が、お金が足らないときに、銀行に借入申込をする、「短期資金」の種類です。
ところが、皆様の中で、「ちょっとまてよ」と思う人があるのではないでしょうか?
つまり、上の理由がないのに(回収や支払の条件も変わらないし、在庫も増えてないし、売上も増加中でないし、特別な支払もないのに)お金が足らなくなって、借入申込をした場合があるぞと・・・
◆資金不足の要注意人物1、赤字補填資金
これこそが、短期資金のもう一つの資金需要である、「赤字補填資金」です。
担保が十分にあったりとか、今までのつき合いが深い場合とかは別にして、基本的には、銀行は、「赤字補填資金」のお金は貸してくれません。
なぜならば、上記の1.~4.の資金は、必ず後でお金がもどってくる資金です。(5.は少し不安がありますが・・・)
一時的に不足することがあっても、売ったお金をもらった時点で、必ずお金は返済できます。
ところが、それ以外の原因で発生する場合は、日々の営業キャッシュフローが回っていない(いわゆる赤字)わけなので、銀行からすると、「貸した金」がもどってこないパターンだと言うことです。
赤字分を埋める資金ですから、当然、後でもどる根拠はありません。たとえ銀行でなくても、もどってくる根拠のないお金は、貸しにくいですよね・・・
◆資金不足の要注意人物2、財務赤字補填資金
それと、忘れてならないのが、財務キャッシュフローが赤字の場合の補填資金です。もう少し分かりやすく言うと、本業の方はお金が回っているのだが、銀行への返済資金等の為に、お金が不足するパターンです。
これも、本当は最初にお金を借りたときには、きちんと返済計画を立てて借りているはずなのですが、最初の計画より、売上や利益が減ってしまった場合なんかにこのパターンに陥るわけです。
この資金も、銀行は、貸すことを非常にいやがる種類の資金です。
分かりますね、つまり、根拠のある運転資金(短期資金)は、基本的には上の1~5のパターンしかなく、又、貸してくれる金額も、上記計算式に従ってきちんとでる金額しか、貸してくれないと言うことです。
◆是非、資金不足理由を、じっくり考えてみて下さい。
如何ですか?「単純にお金が足らないから、銀行から借りなくちゃ・・・」と考えている方がいらっしゃるならば、もう一度、そのお金は、何で足らなくなったのかを、よく考えてみて下さい。
基本的に銀行が貸すことをいやがる資金というのは、企業にとっても、発生しない方が良い、資金需要なのです。そこのところを是非是非考えて下さいませ・・・
( 続 く ・・・)
※次週は、自社の運転資金の必要額を計算してみましょう・・・