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管理会計は大企業だけのツールではない! ~気付く力を養う会計~
第22回:<ステージ2>月次の実績を把握しており、かつ、それにもとづいた
管理も行っている企業(13)
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皆様、いかがお過ごしでしょうか?
今回は、前回に引き続き「在庫の管理」のお話させて頂きます。
前回から2ヵ月経過しているので、前回の概要だけお話すると、
卸売業を営むA社(商品を仕入れ「そのまま」売るか、
「簡単な加工(切ってサイズを変える程度のもの)」を行って販売)の
在庫管理に関して、営業担当者に任せた状況(仕入から販売に至る
まで営業担当者に任せている)で、月末のみ「棚卸表」で
営業担当者から現状を報告させ、損益を確定していたが、
A社長の中で「売上の割に利益が少ないような気がする・・・」との
感覚に陥っており、問題点は何なのか、解決策はあるのか、という
話でした。
私:「仕入れたものをそのまま売る場合は、もちろんですが、販売した
ものと仕入れたものの紐づけはできるんですよね?」
A社長:「もちろん、仕入れの記録と販売の記録を突き合わせることが
できるので、営業担当者が勝手に誰かに販売して、自分のポケットに
入れることは不可能です。」
私:「では、簡単な加工を行った後に売る場合はいかがでしょうか?」
A社長:「正直、その紐づけは難しいですね。簡単な加工といっても、
商品を大量に外注先に持ち込んで、それを加工したうえで、また商品と
して販売していくので、販売したものと当初仕入れたものの紐づけは
困難だと思います。」
私:「そうですか。ところで、加工した場合には、切り屑などの歩留りが
発生しますか?」
A社長:「もちろん、歩留りは発生します。」
私:「歩留り率はどれくらいになりますか?」
A社長:「約90%くらいが一般的です。ただし、加工前と加工後の違いに
ついては営業担当者は把握してると思いますが、会社としては把握して
ません。」
私:「じゃあ、実際にどれくらいの歩留り率かは営業担当者しか把握は
されていないということですね。まずは、実際どれくらいあるかを確認
していきましょう。」
このケースでは、実際の歩留り率を確認したら80%程度でした。
そのような事実を把握できなかったのは、(月末の)時点在庫だけを
把握していたためで、社内での在庫の動きを履歴として残していなかった
ためでした。
場合によっては、不正の温床にもなりかねない部分ですので、在庫の流れの
履歴はしっかりと把握していきましょう。
萬屋博史(コンサルティング部長)
執筆者ご紹介 → http://ct.mgrp.jp/staff/yorozuya/