第20回:<ステージ2>月次の実績を把握しており、かつ、それにもとづいた管理も行っている企業(11)

皆様、いかがお過ごしでしょうか?

今回は、前回の続きで、A社の『労働分配率』の善し悪しの判断の話と、
A社の人の確保に向けた取組みの話をさせていただきます。

A社の『労働分配率』が業界平均と比較しかなり低いという結果を受け、
A社長からは、「なぜ、業界平均より低いんでしょうか?」という質問を
頂きました。

まず、低い理由として、そもそも給与の額が低いのではないか、という
ことが考えられます。これに関しては、A社の給与の額と業界平均とを比較
してみましたが、特に低いということもなかったため、これが原因では
ないということが分かりました。

次に、考えられる理由は、モノづくりをする工程の中で、人に依存する
部分と機械に依存する部分があるが、機械に依存する割合が多い場合には、
相対的に『労働分配率』が低くなります。つまり、人に依存する工程が
少なくなり、人手が少なくて済むため、給与の額も少なくなり、結果として
『労働分配率』が少なくなるということです(代わりに、機械を多く揃える
必要があるため、減価償却費が増えることになります)。

これに関して、A社では、確かに最新の設備を投入することで、精度の高い
加工を行い、生産性も高めているという状況でした。

この結果を、A社長に率直にお伝えしたところ、「確かに現状では、設備に
頼った生産をしているので、『労働分配率』を高めることにより、人件費が
増加するので、会社の利益は減るということになりますね。それは会社に
とっては良くないことだ。」と、ご理解を頂きました。

続けてA社長から、「例えばですが、段取り時間の短縮や不良率の低減によ
り、原価が下がり、利益が増えると思うのですが、それを原資として給与や
賞与に還元していくということは考えとしてはいかがでしょうか?」との
質問がありました。

A社長は、設備に依存していることを前提としても、人の頑張りによって、
時間当たりの生産量を高めたり、不良の発生を少なくしたりして、原価の
削減ができれば、利益率が上がるので、その上がった利益率の一部を給与や
賞与として還元したい、ということを考えたのです。

「それは良い考えですね。早速、経理の数値と連動させて検討しましょう。」
ということで、A社では、『労働分配率』から、利益増と給与増の取組みを
始めました。

御社でも指標を分析してみると、何かの取組みのヒントになるかもしれま
せん。

萬屋博史(コンサルティング部長)
執筆者ご紹介 → http://ct.mgrp.jp/staff/yorozuya/

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