前回は、現場に任せて5S活動を定着させたKS社の事例をご紹介しました。
今回は、連載のまとめとして生産管理を実践するためのポイントについて考えてみましょう。
これまでの連載で、生産管理を実践するために、問題の見つけ方と解決の方法を事例でご紹介してきました。
実践時に発生しやすい問題
コンサルティングの現場では、「話は分かるけど、ウチではできない。」という声を良く伺います。
現場の方は実は問題を良く分かっておられ、原因も掴んでおられることが多いものです。
そして、対策のアイデアもお持ちです。
でも「現実には難しい」となることが多いのです。
それは、対策を行いたけど、「お金が・・・」、「人が・・・」、「場所が・・・」、「協力者が・・・」といったように、対策を実行するのに乗り越えなければならない抵抗や障害があるからです。
逆に言うと、だからこれまでその問題が解決されないままであった、とも言えます。みなさんの工場でも同じようなことがあるのではないでしょうか。
生産管理を実践して生産性の向上につなげるためには、原因と対策を見つけるだけでなく、このような障害を取り除いて、実行の環境を整えることが大切なのです。
実践のポイント
この実行の環境を整えるポイントとなるのが、現場でのコミュニケーションとリーダーの決断です。
(1)コミュニケーション
一人で頑張るのではなく、みんなで取り組むことが解決への近道です。
・会議などを通じで問題や解決策への共通認識をつくります。
・解決方法の実施に当たって、障害がないか、また他業務への悪影響が無いかを検討して、あれば、その対策も確認します。
(2)決断
そして、問題の解決に向けてリーダーをはじめとする関係者が本気であることを確認します。
この2つを行うためには、問題が解決されないことの損失と解決策がもたらす良い状態のイメージをきちんと説明して共有してもらうことが大切です。
このようにして生産管理を実践して少しでも効果が出てくれば、協力者が増えて活動に弾みがつきます。
前回、5Sを定着させたKS社の事例をご紹介しましたが、社長が実行を決断してプロジェクトを結成し、さらに勉強会で共通認識を図りました。
そして、時間内に5S活動の時間を確保する、設備投資も実施するなど、本気であることを示しました。
その結果、全員が本気で取り組むことにつながり、成果が出て活動に弾みがついたのです。
どんな時代でも、問題の先送りは企業に悪影響を与えるだけで良い結果をもたらすことはありません。どんな現場にも障害はありますが、できることから着実に取り組んでいきましょう。
今回の連載が、皆様の生産管理の実践に少しでもお役にたち、品質・コスト・納期のレベルアップにつながれば、望外の喜びです。
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この記事の執筆者
澤田 兼一郎
(株式会社みどり合同経営 代表取締役/中小企業診断士)
立命館大学経済学部経済学科卒業、第二地方銀行を経て当社に入社。中小企業を中心に、経営計画や事業計画の実行性を高める、現場主義のコンサルティングを実施。
特に中小建設業、製造業の経営管理体制の構築、実行力を高めていく組織再構築等のノウハウ等について評価を受ける。
犬飼 あゆみ
(株式会社みどり合同経営 取締役/中小企業診断士)
一橋大学法学部卒業、大手自動車会社のバイヤー(部品調達)として勤務後、当社へ入社。
企業評価における事業DDのスペシャリスト。事業DDでの経営課題の洗い出しをもとに、事業計画や経営計画(利益計画&行動計画)の策定・実行支援が専門分野。