X社の新規顧客獲得に向けて【事例からみる「中小 B to B 企業のマーケティング」・第2回】

第1回では、電子回路の基盤を製造する事例企業X社がピンチに陥った原因として、既存顧客との距離感の測り方、「関係」構築に問題があったとお話ししました。

今回は、X社にとっての新規顧客に目を向けてみたいと思います。
B to Bマーケティングのもう一つの観点である、新規顧客を対象とした「市場」です。

X社は、既存顧客には目を向けていましたが、新規顧客に対してはどうだったでしょうか。
結論から言うと、X社では、新規顧客獲得に向けての取組みは特に行われていませんでした。

既存顧客への依存がスパイラル的に高まる中で、既存顧客への対応に追われ、新規顧客(潜在需要)に目を向ける余裕がなかったというところでしょうか。
今、X社では既存顧客との距離感の再構築として、依存を回避すべく「市場」を意識した行動をスタートしています。
潜在顧客の企業群に対してのアプローチを行い、取引先を増やすことで、既存顧客とのパワーバランスを調整することができるようにするというのが狙いですが、そのためのX社の取組みをご紹介したいと思います。

 

X社の取組み

X社では、まず「何を売りにしていくのか」の整理を行いました。
X社の特徴として、大手企業の一次下請として製造を行ってきた経験から品質管理は高いレベルにあること、また熟練の工員が多いため、目視検査や細かな組立作業に秀でていることが挙がりました。
そのため、賃加工と優れた搬入品質を売りにすることになりました。

続いて、それらをどこに売っていくかという潜在顧客の企業群の選定が課題になりました。
X社では、潜在顧客の抽出にあたり、新規顧客見込である営業先をリストアップする作業からスタートしました。
取引実績のない企業ばかりですので、リスト化するためにも絞り込みを行う必要がありました。
そこで絞り込みの基準として①商品群、②規模、③エリアという3つの観点に着目しました。

①商品群
既存顧客の最終商品はLED照明や家電製品に偏っていたため、依存回避のため、それ以外の商品群で今後の需要が見込める先としました。

②規模
大規模ではなく、小中規模の企業がよいのではないかと考えました。
その理由としては、小中規模の企業では、自社で下請先を育成するよりも、大企業との取引実績を重視する傾向があり、既存の大手企業との取引実績が評価されるのではないかと考えたためです。
また、一方で、大手企業は他社のやり方に慣れた先は倦厭する傾向にあるとも考えられました。

③エリアの選定
X社から首都圏へは車で約3時間であるので、賃率の差など、地理的メリットを発揮できる首都圏の企業やそうした先と付き合いのある同県内周辺の企業という基準を設けました。

そしてこれら3つの観点から絞り込みがなされたリストをもとに、営業を行うことになりました。
X社が絞り込みの基準とした3つの観点は、当然すべての企業に当てはまるわけではありません。
大切なことは、自社が提供しうる価値が何なのか、それにより自社の解決したい課題が何なのかを十分に検討することで、自ずと基準が明確となり、より効果的な営業活動が行いやすくなるという点だと思っています。

次回はX社のその後の取組みや成果について、お話ししたいと思います。

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