対策案の評価と実施について【中小製造業のQCサークル:第11回】

前回までの10回で、事例サークル「THE 金型名人」が「納品後の品質トラブルの削減」をテーマとして取り組み、現状分析、要因分析を進めてきたことをお話しました。
そして、要因分析のツールである特性要因図で発見された内容について対策案を検討し、中でも「CAE解析の実施」という対策案が浮かび上がったところまでをお話しました。

対策案の検討

CAE解析による直接的な問題解決とは別に、仕組みでの対策も議論しました。
その結果、過去トラを活かすためのチェックリストの作成や製品の設計段階での打合せへの参加などが決まりました。
ここで、Nさん達の対策をまとめると、以下の通りになりました。

(1) 金型製作に入る前のCAE解析の実施
(2) 過去トラからのチェックリストの作成
(3) (1)(2)をベースに、打合せへの参加

Nさん達の場合は、多くの要因が結果的にCAE解析という実施策で解決できるという意見となりましたが、各々の要因に合わせて多くの実施策が並列で挙がった場合には、マトリックス図などを使って、優先順位をつける必要があります。

対策案の検討で最も重要なことは、「目的を見失わないこと」だと私どもは考えています。
対策案の検討や対策の実施時期になると、QCサークルのエンド、つまり成果発表会などの日程が迫ってきており、発表会のためのQCサークルになってしまうこともあります。
もちろん、期限や実現可能な範囲内で対策を決定することは重要ですが、それでも本来の目的に戻って、本当に解決したいことは何なのかを見失わずに対策を考えることが重要です。

対策案の実施

次に、対策の実施にあたっては、各々の実施策を具体的な作業レベルにまで分解し、それぞれに担当者や実施期間等を決めていきます。
例えば、(1)のCAE解析の実施については、具体的にどの製品について実施するのか、どういった分析(強度分析なのか、充填分析なのか、冷却回路分析なのか・・・等)をするのか。

当社の場合は、CAE解析をする設備が社内にありませんでしたので、どこに協力を求めるのかも重要になります。
これらの細かい内容について、誰が、いつまでにといったことを決めて一覧表を作成します。

結果、解析のための設備については、社長に相談し、社長の知り合いの会社で実施してもらえるようになりました。
その社からのアドバイスもあり、Nさんたちは、2種類の製品(製品A、製品B)の金型設計段階において、各製品特徴に合わせたCAE解析を実施することになりました。
目標はどちらの製品についても、「金型責任による立ち上がり品質トラブルをゼロにする」ことです。

(2)(3)の実施策についても同様に進めていきます。
実施内容について、あまり細かく記載しても非常にマニアックなものになってしまいますので、次回は、Nさんたちが実施した内容について、どのように効果の確認をしたかをお話したいと思います。

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この記事の執筆者

犬飼 あゆみ
(株式会社みどり合同経営 取締役/中小企業診断士)

一橋大学法学部卒業、大手自動車会社のバイヤー(部品調達)として勤務後、当社へ入社。
企業評価における事業DDのスペシャリスト。事業DDでの経営課題の洗い出しをもとに、事業計画や経営計画(利益計画&行動計画)の策定・実行支援が専門分野。

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