6. 現状把握について (1)パレート図を使ってみる

前回は、「THE金型名人」サークルが、テーマ名を「金型納品後の品質トラブルの削減」に決定したところまでお話しました。今回は、このテーマに基づき、「THE金型名人」がどのように現状把握を進めていったかを見ていきたいと思います。

 

当社は、試作から量産まで、様々なタイプのプラスチック成形用金型を製作していますが、中でも最も受注数が多く、売上高に占める割合が高いのが、射出成形(注)向けの量産用鋼材型です。今回のテーマでは、この鋼材型に絞って、現状把握を進めることにしました。現状把握とは、「悪さ加減を把握する」ということです。

 

当社では、従来から、過去のトラブルをもとに、リストを作成していました。リストに記載されたトラブルは約270件。Nさんたちは、まずはどんなトラブルが多いのか、リストの洗い出しから始めました。

 

金型には当然寿命(通常数十万ショット)があります。この寿命を過ぎて、トラブルが起きたのであれば、仕方がないといってもいいでしょう。Nさんたちは、この金型寿命に到底達していないにも関わらず起きたトラブルについて、中でも、金型のテスト段階や納品直後に起きたトラブル(立上り品質トラブル)について検証することにしました。

 

洗い出した結果を、トラブルの事象別にQC7つ道具の1つ、「パレート図」を作成してみました。トラブルの多い事象順に棒グラフを作成し、その累積比率を折れ線グラフで表します。

 

その結果、
(1)金型の不具合により成形品に表れる品質不良としては、「ヒケ・ソリ」、「ガス焼け」、「ウェルドライン(線模様ができる)」、「金型からの離脱困難」、「冷却に時間がかかりすぎる」などのトラブルが多い(これらは、成形時の問題とも考えられるが、金型製作時に考慮していれば十分防げた問題として、トラブルリストに挙がっている)。
(2)金型自体に表れる品質不良は、剛性不足による「割れ」、「型合わせ面の磨耗」などが多い。

そして、これらの事象が金型不良の7割強を占める結果となっていることがわかりました。

 

それでは次回は、現状把握の続きとして、「層別」という手法についてお話したいと思います。

 

(注)射出成形とはプラスチック製品の最もポピュラーな加工方法。プラスチック材料を加熱して流動状態にし、閉じた金型の空洞部に加圧注入し、金型内で冷却・固化させる。その後、金型を開いて、製品を取りだすといった方法です。

 

みどり合同経営 コンサルティング部門
中小企業診断士 犬飼あゆみ
執筆者ご紹介 → http://ct.mgrp.jp/staff/inukai/

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