「中小製造業のQCサークル」というテーマで、中小製造業でQCサークルという場をどのように活用できるかを考えてみたいと思います。
QCサークルとは
QCサークルとは、職場で小グループを作り、QC手法を活用して職場の管理、改善を自主的・継続的に全員参加で行なう活動です。
この活動は、1950年、アメリカからE・デミング博士がSQC(統計的品質管理)という手法をその当時、勘と経験の職人技に頼っていた日本の製造業(大量生産品は「安かろう悪かろう」と言われていた)へ持ち込んだことに端を発しました。
これを東京大学教授の石川馨先生が、現場第一線で働く人々に自ら興味をもって品質管理を勉強してもらう方法を色々と思案した結果、グループ活動で行う「QCサークル」が生まれたと言われています。
QCサークルの全盛期といえば、1970年代といったところでしょうか。
それ以降、QCサークルの有効性には否定的な意見も多くみられるようになりました。
その理由は複数あるとは思いますが、1つには、品質は「工程で作り込む」という考え方から、「開発・設計で作り込む」という考え方に変わり、コストについても、原価企画で作りこむものになったこと。
つまり、QCサークル活動の大目的であった「現場で品質やコストを作りこむ」という余地が少なくなってきてしまったということです。
また、中小製造業では長引く不況の中で、現場人員を大幅に削減した結果、QCサークルに取り組む余裕がなくなってしまったことも大きいかもしれません。
しかし、私どもではQCサークルへの取組みには、まだまだ意味があると思っています。
その中でも大きな意味としては、「問題解決手法を身に付ける」ということではないでしょうか。
それは同時に、
① 現場で論理的に考えることを習慣づける(論理的でないと、やっても効果的にできない)
② 現場をルーティン業務に甘んじさせない(一般的に従業員は常に同じことをやることを好みがち)
ということでもあります。
これはQCサークルが普及した当初からの目的の1つではありましたが、現在になって特に注目されつつあるように思います。
そのため、現在でもQCサークル活動が活発に行なわれている企業では、製造部門だけでなく、営業や事務なども含めた全社的取組みとして、成果よりもプロセスを重視して活動しているようです。
また、この取組みは、製造業だけでなく、建設業やサービス業にも広がっています。
QC的問題解決法
QC的問題解決法には、
(1) 問題を解決に導くために必要なものの見方・考え方がある(QC的な考え方)
(2) 解き方の手順がステップ別にパターン化されている(問題解決の手順)
(3) 問題を解きほぐすために必要な科学的な手法がある(QC手法)
などの特徴があります。
これらを理解し、身に付けることで、仕事だけでなく、家庭においても、あらゆる問題解決に役に立つと思うのです。
QCサークルのテキストなどを見ると、QC手法(主にQC7つ道具)の解説が多いように感じます。
その一方で、QC的な考え方や問題解決の手順については、実際にどのように実行していったら良いのか、わかりにくいのではないでしょうか。
そこで、本コラムでは事例を用いながら、
(1) QC的な考え方、特にファクトコントロール(事実に基づいて、データでものをいうこと)と重点志向(優先順位をつけて、徹底的に攻撃すること)を、どのように展開するか
(2) 問題解決の手順(サークルの編成→テーマの選定→現状把握・目標設定→要因分析→対策案の検討→対策実施→効果の検証・標準化)の中で、何をどう押さえていくか
を中心に見ていきたいと思っています。
具体的事例に入る前に、次回は成功するQCサークルのポイントを考えたいと思います。
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この記事の執筆者
犬飼 あゆみ
(株式会社みどり合同経営 取締役/中小企業診断士)
一橋大学法学部卒業、大手自動車会社のバイヤー(部品調達)として勤務後、当社へ入社。
企業評価における事業DDのスペシャリスト。事業DDでの経営課題の洗い出しをもとに、事業計画や経営計画(利益計画&行動計画)の策定・実行支援が専門分野。