事例企業A社の紹介とサークル編成【中小製造業のQCサークル:第3回】

前回は、QCサークルにおける方針管理の重要性をご説明しました。

今回からは、事例をもとにQCストーリーの流れを見ていきたいと思います。
事例企業のA社は群馬県にある従業員数40名程度の金型メーカーです。自動車メーカー、家電メーカー向け等のプラスチック成形用金型(量産型・試作型)を受注生産しています。
業暦20年を超えるA社では、以前からQCサークルを導入し、より良い職場環境を作ったり、お客様にもっと喜んでもらえることを考えたりなど、様々な問題解決に取り組んできました。
ここでは、A社の活発な取組みの中から、一例をご紹介したいと思います。

A社では、毎年のQCサークルの開催にあたり、経営幹部がリーダーを選定し、メンバー編成も行なっています。
他社では、メンバーの中から自由にリーダーを選ぶというやり方もありますが、A社では社員教育的な意味も込めて、「今年はこの人にリーダーをやってもらいたい」と、幹部が選任しているのです。

QCサークルのリーダーに必要な能力

QCサークルのリーダーに求められることは、以下の通りです。

(1)サークルの進め方の方向付けやまとめ役となること
(2)メンバー間で良好な人間関係を築き、メンバーの協力体制を作り出すこと(全員参加・役割分担を指揮する)
(3)QC手法の活用などについて、メンバーを指導すること

A社では、これらの能力を備えた人をリーダーに選任するというのではなく、QCサークルを実施していく過程で、このような能力を身につけてほしい人をリーダーに選任しています。

この年のQCサークルのリーダーには、N主任(30代)ともう2名が選ばれ、7~8名ずつの3チームが編成されました。
7~8名というと、「少し多いな」と思われるかも知れません。
A社では、24時間体制で金型製作にあたっているため、交代で夜間勤務があることも考慮され、少し多めのメンバー編成となっていたようです。
通常は5~6名程度でしょうか。
それではこれから、N主任がリーダーを務めたサークルでの展開事例をもとに、QCストーリーについて見ていきたいと思います。

A社のQCストーリー

リーダーに選ばれたN主任がまず始めにしたことは、メンバーを集めて、サブリーダーの選定とサークル名を決めることです。

NさんのグループのメンバーはNさんを含めて7名。
ベテランから若手まで、営業担当者から製作担当者までバランスよく揃ったサークルメンバーです。
ワイワイガヤガヤと相談すること約30分、リーダーの補佐兼書記役のサブリーダーはNさんより少し若いOさん。
チーム名は、「THE金型名人」に決まりました。

ここで私どもが顧客企業のQCサークルをお手伝いさせていただく際のことを少しお話しさせていただきますと、全サークルが揃って行う会合を定期的にお手伝いしています(例えば月に1回)。
もちろん全体での会合以外に各サークルが別途集まって議論していただく必要があり、全体での会合ではQC手法の勉強や進捗確認、大きな方向性が間違っていないかといったことを確認していきます。

初回では、Nさんたちが今回行ったように、サークルを編成し、リーダー・サブリーダーやサークル名を決定したり、テーマを選定したりといったことがメインになります。

QCサークルがうまく軌道に乗るかどうかは、単純と思われるかもしれませんが、出席率とどれだけ楽しいキャッチコピーを考えられるかにとても大きく左右されます。
最初は少し面倒だと思っていても、メンバーが集まって何気ない会話をしたり、キャッチコピーを考えたりする中で、始めてみたらなかなか楽しくやっていけるようになるからです。
その雰囲気づくりも私どもの重要な役割だと思っています。

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この記事の執筆者

犬飼 あゆみ
(株式会社みどり合同経営 取締役/中小企業診断士)

一橋大学法学部卒業、大手自動車会社のバイヤー(部品調達)として勤務後、当社へ入社。
企業評価における事業DDのスペシャリスト。事業DDでの経営課題の洗い出しをもとに、事業計画や経営計画(利益計画&行動計画)の策定・実行支援が専門分野。

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