皆様こんにちは。前回から、事例企業A社の問題点についてお話ししています。
社長と私どものお打合せの途中で電話が入り、T課長から、試作品の納期がどうも間に合わないという連絡を受けたというところ(⇒問題2)からの続きです。
さらに、そのまた10分後、「プルルー」
S課長(量産):「社長、○×部品の量産立ち上げですが、どうしてもうまく精度が出ません。どうしたらよいでしょうか。」
社長:「うーん、試作の時には、特に問題なかったんだけどな。まあ、あとで見に行くよ。」⇒(問題3)
問題2は、前回もお話した通り、当社では試作の担当者がお客様との直接のやり取りをしておらず、社長を通じてのやり取りとなっていることに起因しています。
試作段階でお客様が望んでいるのは「図面通りの製品」とは限りません。
そのため、お客様との打合せを密にして、依頼を受けた部品の使用箇所、用途などを知ると同時に、どの部分が大事で、どの部分は許容される可能性があるのか、本当に図面通りの精度が必要なのか等を把握して、それに基づいた仕様変更・コスト提案が重要になっています。
試作担当者とお客様とが直接つながっていないと、どうしても密なやり取りができず、試作に不必要に時間がかかり、納期遅れにもつながってしまいます。
そのため、特に急ぐ試作は社内でやらず、外注に任せようという判断になりがちで、これでは自社に大事なノウハウが蓄積できません。
また、試作の段階で顧客からの情報収集や打合せを密にしておかなければ、懸案事項の潰し込みができないままに量産に引き継がれることになり、これが問題3のような会話につながっていくと考えられます。
試作は一品物なので、何とか無理やりにでも図面通りに作ることができますが、量産になるとそうはいきません。しかも、いったん量産図が出てしまうと、その変更は容易ではないのが通常です。これでは量産のキャパも上がりません。
結局のところ、試作の納期遅れの問題も、量産の精度出しの問題も、社長が何とか対応してしまいました。そしてまた電話が・・・。
重要な打合せがなかなか先に進みません。
社長には、得意先別の今後の営業方針のみならず、それを実現していく上での外注戦略、技術開発の方向性等、色々と考えなければならないことが山積みです。そのためには、会社の社長依存体質を何とかしなければならないですよね。
次回は、このように社長に依存するようになってしまった原因について、考えていきたいと思います。
みどり合同経営 コンサルティング部門 副部長
シニアコンサルタント 澤田 兼一郎
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みどり合同経営 コンサルティング部門
中小企業診断士 犬飼あゆみ
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