前回ご紹介した岩渕龍生氏の歯科コンサルティングは「岩渕マジック」と言われて大変な評判だ。前回ご紹介した著書「歯科医院地域一番実践プロジェクト」は4500円もするにも拘らず、4ヶ月でもう第三刷まで売れている。「岩渕マジック」とは何かだろうか。
●クライアントの売り上げをあげる王道は何か
経営コンサルティングで、クライアントの売り上げをあげる主な手段は何だろうか?従来は、「広告」やマーケティングであった。「チラシやDMを打ち、安売り、特売などの目玉でお客さんを集めて、集まったお客さんにうまい接客をすることで、更に高いものを買っていただくというのが王道」と言われていた。しかし近年ではそれは通用しないこととが明らかだ。商店街の凋落を見れば、そのような「販売代理」的な商売は成り立たないことは明白。
●一時的な効果では解決しない
先日も、ある商店街の方から、店舗の新装開店をやり、起死回生の手を打ちたいという相談を受けた。しかし新装開店でお客を増やしても、2年も経てば店の新鮮味はなくなる。だのに計画を見るとその効果が15年も続くことを前提としているではないか。右肩上がりで売上が続く時代は15年前にすでに終わっているにもかかわらず、である。
一時的な効果に目を奪われて大切なことがおろそかになるのは、理念が欠けているからではないだろうか。
●永続的な効果を生む「岩渕マジック」とは
岩淵氏のコンサルの手法は、従業員一人一人に面接をし、ヒアリングをするところから始める。ここが従来の歯科のコンサルと異なる。大変な手間をかけてまずここから始めるのが「岩渕マジック」である。長年の試行錯誤の末、ここに行き着いたと言う。
岩淵氏は、「どんな素晴らしい改革案も、実行され、効果をあげなければただの空論」といっている。実行するのは、院長だけではない。中心は、現場の従業員である。院長と従業員が変われば、改革案は実行される。そして次々と新しい改革案が発案され、実行される。こうなれば永続的な効果が生まれる。ここが最も大切なことであり「マジック」なのだ。
●「岩渕マジック」は、みどり合同経営の事業再生の手法と共通している
この「岩渕マジック」のやり方は、従業員一人一人に面接をし、ヒアリングをするところから始め、「意識改革」をめざすという点で、わがみどり合同経営の事業再生の手法と共通している。(以前ご紹介した「受注工事業の黒字転換の仕組み」 2004年 7月 28日号 – Vol.107 – 以下を参照)
http://www.digitalbank.co.jp/oyakuHP.nsf/01b61ace0aa1498149256f9e0027e252?OpenView
●トヨタの「カイゼン」とも共通する「意識改革」
また、「岩渕マジック」はトヨタの「カイゼン運動」とも共通する。トヨタもカイゼン運動などによる生産性向上で、いまや世界一のトヨタになろうとしている。しかし以前も書いたように、生産性向上はカイゼン運動の結果であって目的ではない。カイゼン運動の目的は、人々の意識を変えることにあるという。
カイゼン運動をやり続けることで、人々に勇気をあたえ、人々の気持ちが変わり、意欲にみなぎるようになると、創意工夫の意識が生まれる。その結果として、ムダが見えるようになり、ムダを取る方法を常に考えることが出来るようになる。生産性向上はその結果として現れるのだ。
●「岩淵マジック」は意識改革のマジック
岩淵氏の意識改革の手法は、実践に基づいているだけに、本当に具体的でわかりやすい。著書「歯科医院地域一番実践プロジェクト」には、電話応対改善法、受付応対改善法、イベントプロジェクトでわくわく楽しい歯科医院を創る方法、などなど、意識改革の具体的手法が満載されている。これで4500円は本当に安い。