コラム 管理会計は大企業だけのツールではない! ~気付く力を養う会計~第12回:<ステージ2>月次の実績は把握でき、かつ、それにもとづいた管理を行っている企業(3)

皆様、こんにちは。

今日は、利益責任を負わされている幹部の方とお話をした時に出てきた管理会計上の問題についてお話します。

D社は、首都圏で何店舗か小売店を運営し、それらの店舗を本社で統括して管理を行っている企業です。私も、たまにそのお店に行って買い物を楽しんでおります。

私がお店に買い物に行った時に、たまたまその店舗の責任者Yさんと立ち話になりました。社交辞令ではないのですが「大盛況ですね。」と私が言うと、Yさんは「確かにお店は大盛況なのですが、このところ本社費の負担が増えて、なかなか店舗の目標利益を達成できなくて。」とお店の盛況ぶりとは裏腹に曇り顔です。

実際にD社では、店舗ごとの月次の実績が正確に算定され、各店舗の売上総利益の金額に応じて、本社費の実績が按分される仕組みとなっています。

その後、立ち話でいろいろと話を聞いてみると、Yさんの不満は、店舗独自の利益は好調なのに、本社側が当初の予算をオーバーして経費を使った結果、本社費が増え、店舗への本社費の配賦額が増加したため、本社費負担後の利益は予算を達成できてないという点でした。

しかも、本社費負担後の利益でYさんは評価されるため、納得がいかないというのです。
Yさん自身ではコントロールしようのない本社費を、Yさんの評価に加味していくことは、確かに不公平に思えますね。

管理会計を行っていくにあたり、いくら正確な数字を並べて予算と実績の対比をしても、各店舗などの評価をする場合には、そこに公平感や納得感があるということが非常に重要になります。そのような公平感や納得感がなければ、せっかく行っている管理会計がマイナスの方向に作用し、現場の方の働く意欲をなくしてしまう可能性があるのです。

D社のケースでも同様で、Yさんが管理している訳ではない本社が、経費を使えば使うほど、Yさんに重く責任がのしかかってくるのでは、Yさん自身が不満を抱えても当然だということです。

次回は、D社がどのような管理会計の仕組みにすれば、公平感や納得感が保たれるのかについてお話したいと思います。

みどり合同経営 コンサルティング部長
シニアコンサルタント 萬屋博史
執筆者ご紹介 → http://ct.mgrp.jp/staff/yorozuya/