皆様、こんにちは。
今回は、前回の続きですが、営業部門と製造部門を有する企業で、業績が上向かない原因を、営業部門では「製造が安く作れないから」と、製造部門では「営業の受注量が少ないから」と言っているのですが、その言い分について、管理会計上の問題点と対策を考えていきたいと思います。
「どちらの言い分も正しいですね!」と私が言うと、「確かに、販売価格が月次の実際原価にもとづき算定される以上、営業部門は利益確保のために、販売価格を高くせざるを得ないし、その分、受注量が少なくなれば、製造原価が高くなっても当然ですよね。」と社長は更に頭を抱えていました。
実際に、一旦受注量が減少すれば、製造単価が上昇するため、実際原価にもとづき販売価格を決定する場合は、販売価格が上がり、さらに受注量が減少するという悪循環に突入する可能性が高いと言えます。この企業は、このような悪循環に突入してしまったために、予算を上回る実績を出すことが出来ていないのです。
「なぜ、月次の実際原価で販売価格を決定するようにしたのですか?」と私が聞くと、「会社全体での利益を確保するためです。」というシンプルな答えが社長から返ってきました。「季節変動等で月次の実際原価が高くなった場合、受注量が減って、その後、どんどん販売価格が高くなっていったりしませんか?」と続けて聞くと、社長も販売価格の決定方法に問題があることに気付いた様子で、「販売価格はどのように決定していけば良いのでしょうか?」と逆に質問を投げかけられました。
「せっかく予算があるのだから、予算の原価にもとづいた販売価格が良いのではないでしょうか。」と私は答えました。
予算の原価にもとづいた場合、営業部門と製造部門の責任が明確になるため、責任転嫁がなくなる。営業部門においては、製造部門の生産の良否により販売価格が影響を受けないことになる。また、製造部門においては、受注量による問題で製品単価が下がらないのか、それ以外の問題で下がらないのかが明確になる。つまり、問題点が明確になるため、経営上の判断も正確にできるというメリットがある。
この話には、社長も興味を持たれたようで、「自分の会社に合う方法を考えてみる!」と目を輝かせて、その場を後にしました。
皆様も、問題点を明確にする仕組みを考えてみてはいかがでしょうか?
みどり合同経営 コンサルティング部長
シニアコンサルタント 萬屋博史
執筆者ご紹介 → http://ct.mgrp.jp/staff/yorozuya/