現状をにらみながら、1年後、2年後・・・と将来どのような会社となりたいのかを数値で検討することは、非常に意義が大きいと思います。
前回まで検討してきた経営革新の内容を、数値計画として作成していきます。
具体的には、下記を一つ一つ検討しながら作成します。
(1)既存事業の売上計画、新規事業の売上計画(営業戦略も合わせて検証)
(2)設備投資計画を含む製造計画
(3)人員計画
(4)経費計画
(5)その他計画(今回は、借入金の返済計画についてお話します)
今回は特に、上記の内、(1)、(3)、(5)のポイントをご説明します。
(1)の売上計画については、既存事業はまず過去の分析(顧客別・製品別)を徹底的にすることです。顧客別は確認されているご企業様も多いですが、製品別、また利益までとなると、少しハードルが高いようです。
しかし、過去の傾向を見て、将来計画を立てるためには、必要なことだと思います。
社内にデータがない場合には、おおまかなカテゴリに分けて考えることもお勧めです。
例えば、価格帯別など、ご会社にあった分け方で考えると、スムーズかもしれません。
新規事業の場合は、結構難しいかもしれません。
ただし、今回のO社様では第二回でご説明したように、既存取引先からの依頼だったため、取引先の今後の販売計画などを入手した上で、計画に盛り込みました。
新規事業は大量生産品であるため、発注単価が叩かれやすいことにも留意し、今までの限界利益率より下がることも加味しました。
(3)の人員計画については、売上計画を元に作成した製造計画を、部門別(顧客別・商品別)の月間生産量まで落とし込み、必要となる人員数を検証することが重要です。
また、人別の将来の昇給見込や新規採用、定年退職者も考慮しました。
(5)をお話しする前にお伺いするのですが、皆さんの中には、金融機関の担当者から、「債務者区分(正常先、要注意先、要管理先、破たん懸念先、実質破たん先)」や「債務償還年数(借入金を返済できる年数)」のお話を聞いたことがあるのではないでしょうか。
金融円滑化法では、「概ね5年以内に正常先」というのが一つの目安となっています。
これは5年後に債務償還年数が10年以内になっていることを指します。
このような金融機関の目線を意識することも重要です。
例えば、金融機関への返済額を元に算出した目標利益と、売上計画から出された利益との違いを確認してみましょう。
売上計画から出された利益が、目標利益よりも下回った場合には、金融機関からは経費削減や、更なる売上の上乗せなどのお話が出るかもしれません。
今回は、そういった金融機関の目線も意識した上で、数値計画を検証しました。
最終的に、作成された数値計画を確認すると、経営革新計画の申請に必要となる基準(※)を軽くクリアしていました。製造的に無理なく、営業もかために見た数値を元に計画していますので、実現可能性も非常に高そうです。
(※)例えば5年計画の場合、期間終了時に、
(A)「付加価値額(一人当たりの付加価値額)」の伸び率が15%以上、
(B)「経常利益」の伸び率が5%以上
をどちらも満たすことで、「経営の相当程度の向上」とみなされます。
次回、ついに申請です。
我々は、この経営革新計画の申請を通じて、ご会社の雰囲気の変化を感じました。
そのあたりについてもお話しします。
みどり合同経営 コンサルティング部門 副部長
シニアコンサルタント 澤田 兼一郎
執筆者ご紹介 → http://ct.mgrp.jp/staff/sawada/
みどり合同経営 コンサルティング部門
コンサルタント 三谷利恵
執筆者ご紹介 → http://ct.mgrp.jp/staff/mitani/