コラム 工事原価管理と支払業務、経理業務のムダ(13)を追加しました。

専門工事業D社では、実行予算管理から支払業務までを建設業特有の工事原価管理に対応した専用のソフトウェア(以下ソフトウェア)の導入を行い効率化することにしました。ソフトウェア導入に向けて社内の準備を始めましたが、色々と問題が山積です。前回は、工務部員のITスキルをアップさせるための取り組みについてお話しました。
今回は、ソフトウェアを運用するにあたり、マスタ登録について検討したお話です。

 

【14.実行予算書の社内標準化】

 

工事原価管理ソフトウェアを導入するために、工務部内のIT環境整備を行ってきました。具体的にはパソコンの入れ替えやLAN環境の整備、セキュリティ強化などを実施し、工務部員のITスキルアップの為に勉強会を実施してきました。

 

これらと並行して、今回のプロジェクトリーダ本田君と柏木君(両名とも工務部の若手でパソコンが得意)は、ソフトウェア会社から導入指導を受け、初期設定などの打ち合わせを行ってきました。初期設定の中でも重要なポイントとなるマスタ設定について、ご説明したいと思います。

 

このマスタ設定とは、自社の基本情報をあらかじめマスタ登録することで、自社なりの業務が可能となります。例えば、顧客マスタには受注先の情報、発注先マスタには下請け業者や資材発注先の情報、実行予算マスタには、実行予算書の項目である「工種」を設定します。各種のマスタ登録が適切に登録されていないと、ソフトウェアの使用を開始することができません。

 

顧客マスタや発注先マスタ登録については、支払管理を担当している総務部の遠藤さんと相談し、支払先リストなどを元にスムーズに登録作業を行うことができました。

次に実行予算マスタ登録を行うことにし、過去の実行予算書を確認しながら相談することにしました。

 

柏木君:「このソフトウェアの実行予算項目の初期設定は、建築業用となっていて当社のような
     専門工事業とは違っている。
      当社でいつも使っている実行予算項目に修正しないと使えないよ。」

本田君:「それもそうだが、当社では担当者毎に実行予算の項目や並びも異なっている。
     社内基準というものは無いと思うよ。」

 

本田君・柏木君「俺たち二人で社内基準を決めるわけにもいかないし・・・。」

 

困った二人は工務部長に相談することにしました。

 

工務部部長:「そうなんだ。当社は担当者がそれぞれEXCELで実行予算書を作っていたので、
                 担当者毎に項目や並びがバラバラなんだよ。社内基準を作らなければと考えていたんだが、
                 工事原価管理ソフトウェアの導入を機に、実行予算書を社内統一化に取り組もう。
                 本田君、柏木君、早速実行予算の社内標準書式を作ってくれないか?」

 

本田君:「わかりました。過去の実行予算を参考に工事種別ごとにいくつか作ってみます。」

 

本田君・柏木君は実行予算書のマスタ登録について、工務部長から指導を受けつつ完了することができました。実行予算の項目(工種)の取り方、並びについては、社内用の簡単なマニュアルを作成し、このような場合はこの項目で管理するなどの例も記載しました。これらの作業により若手の二人が勉強になったと工務部長も喜んでいました。

 

マスタ登録について簡単に考えられがちですが、実際に行ってみると、現在の業務内容を洗い出して整備していく中で色々な問題が見えてきます。これらの問題を速やかに解決して進めていくためには、業務を熟知したベテランの目が必要ですが、今回は工務部長と総部のベテラン遠藤さんがその役だったと言えます。

 

次回は、ソフトウェアの試用前に工務部にて説明会を行った際のお話をしたいと思います。

 

みどり合同経営 コンサルティング部門
コンサルタント 山下晶子
執筆者ご紹介 → http://ct.mgrp.jp/staff/yamashita/