専門工事業D社では、実行予算管理から支払業務までを建設業特有の工事原価管理に対応した専用のソフトウェア(以下ソフトウェア)の導入を行い効率化することにしました。ソフトウェア導入に向けて社内の準備を始めましたが、工務部のパソコンは個人の私物だったり、従業員のITスキルにバラつきがあったりと、問題が山積です。今回からはこの問題にどのように対応したかをお話致します。
【12.従業員ITスキルアップ作戦(1) ~工務部のパソコン~】
前回から引き続き、ソフトウェア導入のスケジュールを3名(ソフトウェア選定を担当した、総務部の現在支払い業務を担当しているベテランの遠藤さん、若手でPC操作が得意な中村さん、工務部の優秀な若手で少し大人しい本田君)で相談しています。
中村さん:「今回のソフトウェア導入後、工務部員(主に工事責任者、現場監督とか現場代理人とも言います。)
と管理部員 (主に支払業務の担当者)が運用の中心となります。平たく言えば、この人たちがパソ
コンからデータを入力するということになります。
元々管理部ではパソコンを使った業務も多く、パソコン操作については問題ないレベルだと思うけど、
工務部は大丈夫なの?」
本田君: 「これまで工務部ではパソコンの導入を進めてこなかったため、個人的にパソコンに興味がある人が
会社に個人所有のパソコンを持ち込み、業務に使っているのが現状で・・・。
いまだに実行予算書や工事毎の支払簿を手書きで利用している人が工務部の半数程度います。」
私: 「なぜ個人のパソコンを使っているのですか?」
工事部長:「会社の備品として購入すると、大切に使われずよく壊れていました。そこで個人購入して
もらった方が良いのではないかといった提案がされ、また1人に1台パソコンが与えられていた
わけではなかったので、どうしても現場事務所で使いたい人は、個人パソコンを利用するしか
なかったわけです。 現場でパソコンを使いたい人には各自で購入してもらい、会社からは購入
補助金を出すようにしました。」
私: 「なるほど、そんな経緯があったのですね。しかし最近では、大手ゼネコンは受発注業務をパソコンで
行うようになったと聞いていますし、また公共工事においては、電子納品が求められることが多くなった
のではないですか?」
本田君: 「そうなんです。図面のやり取りや協力会社との段取りもメールで行うことが多くなっていますし、
電子納品に対応して写真や図面等の整理に現場ではパソコンは絶対必要です!」
私: 「そうですか。そうすると、ウィルス対策やデータ漏洩対策などセキュリティ面はどうしているので
すか?」
本田君: 「それは、個人任せになっており、私も問題だと感じていました。例えば、ある従業員が退職
した際などデータはきちんと消去されたかどうかも確認していませんし・・・。
その従業員が取りまとめていたデータも無くなってしまい、後から困ったことがありました。」
私: 「今回のソフトウェア導入を機に会社でパソコンを購入することをご検討頂けませんか?
個人所有のパソコンに会社で購入したソフトウェアをインストールすることになりますし、
今後重要な業務である実行予算管理や支払管理を実施するのでしたら、会社でパソコンの
管理をする方が安全・安心ですよ。」
本田君: 「そういえば、OS(Windowsのバージョン)も各パソコンによって違っているし、なんとか
エディションも違っています。社内のネットワークに繋がらないパソコンもあったような・・・。」
その後、ソフトウェア導入に備え会社にて工務部のパソコンを購入することになりました。
次回は、工務部にてパソコンの勉強会を立ち上げたお話など本田君の奮闘ぶりについて
お話ししたいと思います。
みどり合同経営 コンサルティング部門
コンサルタント 山下晶子
執筆者ご紹介 → http://ct.mgrp.jp/staff/yamashita/
前回までのレポートはこちらをご覧ください → http://ct.mgrp.jp/column/c01/