これは使える!ちょっと工夫”業務改善への道” 「管理資料・会議資料作成のムダ(8)」を追加しました

建設工事業のC社様より、工事部門で利用している管理資料(実行予算管理に関するもの)について運用がうまく出来ていないとの相談がありました。

 

工事部長が中心となりEXCELを利用して管理を行おうとしましたが、うまく行かず、実行予算管理専用ソフトウェア(以下、実行予算管理ソフト)の導入も検討しました。しかしながら、まずは自社の実行予算管理についてのルールの明確化が最優先事項であり、合わせてPC操作レベルの向上を図っていく事になりました。

 

【10.実行予算書が早期に提出されない訳】

工事部長は、実行予算管理ルールのどこがうまく行っていないのか、現在の業務について再度検証をすることにしました。実行予算は現場代理人が工事着工前に作成し工事部長に実行予算書として提出することが、社内ルールとして決まっています。

 

しかし工期が8割方進んだころにようやく実行予算書が提出されるのが現状です。これではほぼ工事の竣工後に作成する工事精算書と同じ内容です。

 

私は工事部長に「実行予算書が出来ていないのに工事を進めてしまって大丈夫なのでしょうか?」という質問をすると、C社独自の発注方式について説明してくれました。

C社では、社長・工事部長の承認のもと発注管理者が資材や外注業者への発注を行っています。すべての発注を行っているわけではなく、高額な資材や発注量が多い資材、外注業者への発注を主に行っており、一つの工事であれば外部発注金額の8割程度を発注管理者が値決交渉を行い、後の2割は現場代理人が工事の進捗に合わせて値決交渉や発注を行っています。

現場代理人の立場からすると、実行予算はほぼ発注担当者が発注した時点で決定しており、現場代理人は主に工程管理や品質管理に重点をおいた工事管理を行えばよく、工事原価管理の重要性は二の次だったのです。残りの2割程度の工事原価管理については、工事が終盤に入るころには発注が進んでおり、実際の発注金額を記載し実行予算書を完成させていました。

 

工事原価については、着工時には8割程度決定しており、実行予算管理は簡単そうです。しかしなぜ残り2割程度の部分を早めに詰め、実行予算書を早く提出しないのでしょうか?

 

以前当社では、実行予算すべてを現場代理人が作成していた時期がありました。この時、実行予算金額を大きくオーバーした現場代理人には、厳しく責任追及されていました。その事が今でも現場代理人の中で「何がなんでも実行予算をオーバーしてはいけない。」という思いとなり、「原価が確定してから実行予算を提出する。」といった行動を取るようになったのではないかということです。

 
この現場代理人の考えを変えなければ、実行予算管理を工事の早いタイミングから実施していくのは難しいと思われます。

 

工事部長は、現場代理人が実行予算を作成することの意味や目的を繰り返し説明することにし、実際に実行予算をオーバーした場合も叱責するのではなく、なぜそうなってしまったかを全員で考え反省し情報共有するようにしました。実際には、工事部長や発注責任者が現場代理人に対し個別に指導を行い、工事会議にて実行予算管理の成功例や失敗例を情報共有していきました。

 
その取組みの甲斐もあり、半年ぐらい経ってようやく全工事の8割程度が工事着工前に実行予算書が提出されるようになりました。後の2割も工事着工後2カ月以内には提出されるようになりました。

 

次回は実行予算書に基づいた進捗管理、利益管理についてC社の取組みをお話したいと思います。

 

みどり合同経営 コンサルティング部門
コンサルタント 山下晶子
執筆者ご紹介 → http://ct.mgrp.jp/staff/yamashita/

 

前回までのレポートはこちらをご覧ください → http://ct.mgrp.jp/column/c01/