1月20日、こちらアメリカではオバマ新大統領の就任式が約200万人に見守られながら盛大に行われました。
首都ワシントンから電車で約2時間というここフィラデルフィアの私の知人でも何人かが、その歴史的瞬間に立ち会ったようです。また、当日は、フィラデルフィア街中でも人や車の通りがほとんどなく、みんながテレビの前でじっと、その瞬間を見守っていた様子がうかがえました。
人々のオバマ大統領に対する期待はそれだけ大きいわけですが、中でも景気対策が注目されていることはいうまでもありません。この点、オバマ大統領は就任後にビデオ演説を行い、大型景気対策による経済効果を国民に向けてアピールしました。今回は、人々が大きな期待を寄せるこのリカバリー・プランについて少しお話したいと思います。
この演説でオバマ大統領は、「今後2~3年間で、21世紀のアメリカが強さと競争力を維持するのに必要なエネルギー・教育・医療・インフラの分野に優先して投資を行う」と述べ、これに関連して新たに300~400万人の雇用を確保できると発表しています。そして、これは単に諸問題に予算を注ぎ込むのではなく、成功する事業に投資するのだと述べています。
まずエネルギー問題では、今後3年間で、太陽光や風力などの代替エネルギーの生産能力を倍増させるとしています。これにより、75%の公的施設のエネルギー効率を改善し、年間20億ドルの税金を節約すること、また250万の一般世帯へも供給し、平均的な4人家族で年間350ドルのコストの削減が実現するとしています。
また教育の分野では、1万の学校の教室や図書館、実験室等をより充実させることで、500万人以上の生徒の学習環境を改善するとしています。大学については、400万人に2,500ドルの奨学金を支給することを含め、新たに700万人が修学できる体制づくりをするとしています。
もともとアメリカの大学の学費が高いのもありますが、この不況で大学への寄付金も少なく、2008年秋に始まった新学期の学費上昇率は公立で平均5.7%、私立で平均4.8%となりました。
親が特別裕福でない限り、アメリカでは多くの学生が学資ローンで払うのが一般的で、私立大学の卒業生の6割以上がローンを抱えて卒業するといわれています。この不況でローンが組めず、多くの学生が大学を中途退学したり、そもそも進学を断念したりしていた中で、今回のリカバリー・プランに多くの学生も期待しています。
オバマ大統領は、「大胆かつ迅速な行動を取らなければ、状況はさらに悪化する」として、1カ月以内の景気対策法案成立への意欲を見せています。「オバマ大統領が仕事をくれる」等、人々が大きな期待を寄せるリカバリー・プランの行方については、またお伝えしていきたいと思います。
ご参考
○The White House Blog Post 2009/1/24 “President Obama delivers Your Weekly Address”
http://www.whitehouse.gov/president-obama-delivers-your-weekly-address/
○CNN.Money.com 2008/10/29 “College costs rise”
http://money.cnn.com/2008/10/29/pf/college/college/index.htm
みどり合同経営 コンサルティング部門
中小企業診断士 犬飼あゆみ
執筆者ご紹介 → http://ct.mgrp.jp/staff/inukai/
前回までのレポートはこちらをご覧ください → http://ct.mgrp.jp/column/c05/