コラム 管理会計は大企業だけのツールではない! ~気付く力を養う会計~ 第9回:<ステージ1>月次の実績は把握できるが、それにもとづいた管理を行ってない企業(5)

 皆様、こんにちは。

今回は、少し横道にそれてしまいますが、最近、私の周りでよく話題にのぼる話をさせていただきます。

皆様は、「資金繰り」と聞くと、あまり管理会計とは関係ないという感覚をお持ちなのではないでしょうか?

先日、ある中小メーカーの社長が「ウチの社員は、〆日までに納品しなきゃならない理由を全く分かってない!」と嘆いておられました。ここで、社長が言っている〆日とは、納品予定日ではなく、当社が発行する請求書の〆日のことです。その〆日までに、納品しないと何が起こるのでしょうか?

会社は、〆日までに納品したものを、請求書として得意先に請求します。その請求額が約束された日付に入金されます。そのため、〆日を超えて納品された場合、その請求額は翌月の請求書にまわされ、結果、入金日もひと月遅れてしまいます。

つまり、〆日までに納品できないことにより、あるタイミングで使えるはずだったお金が使えなくなってしまうのです。ただ、そのことをどう受け止めるかは個々の社員によりマチマチだと思います。

「そのことを社員に理解してもらうのは、時間がかかると思いますよ。御社にとって本当にそれが必要なら、まずは、そこを評価していく仕組みを考えてみてはいかがでしょうか?」と私が答えると、「確かに、教育にはかなりの時間が必要になりますよね。教育は続けていく必要があると思いますが、目先のことを考えると、その部分を評価して、社員にはやる気を出してもらうしかないですね。」と、社長自身もかなり冷静に考えられたようでした。

予算と実績を対比して、その達成率にもとづいて評価をしていくことは、管理会計の基本ですが、どの部分を評価していくかによって、社員の意識も変わってきます。業績評価会計とよばれることもあるようですが、この場合には、〆日までの納品高を評価の対象とすることで、社員は〆日までにたくさん納品すれば高い評価を受けると思い、〆日までにより多く納品しようという意識を持つようになります。

会社の目標と社員に対する評価を連動することで、業績が変わってくるかもしれません。一度、検討してみてはいかがでしょうか。

みどり合同経営 コンサルティング部長
シニアコンサルタント 萬屋博史
執筆者ご紹介 → http://ct.mgrp.jp/staff/yorozuya/