建築工事業C社様の工事部では、実行予算書の早期作成、書式の統一など実行予算作成の社内ルール決定など、工事部全員で取り組んできました。
その結果、工事毎の最終利益を早期に把握することが出来るようになり、正確性も向上してきました。すべての工事を集計した「工事利益管理表」を工事部内の会議で利用していましたが、経営会議においても活用するようになりました。
【13.「工事利益管理表」を経営会議資料として活用】
C社様の経営会議は、社長様、役員様、各部長様(営業、工事、総務)が出席され、主に営業情報、工事進捗状況、当初予算に対して実績はどうなのかについてそれぞれ発表が行われ、対策を話合っています。その中でも、予算に対して実績が現状どうなっているのかについては、試算表からだけでは把握することが出来ません。
建設業の場合、工事が完成して始めて「完成工事高(売上)」と「工事原価」が計上され、そこで粗利益がいくらであったかが試算表で確定することになります。
C社様では通常工事期間は数ヶ月で完成するものから数年に及ぶものもあります。しかし完成しなければ、試算表に利益として認識されません。そこで多くの建設業の会社では、今期に完成する工事について予定工事利益を計算し、決算時の利益予測を行っています。
しかし、この方法を取った場合、予定工事利益の把握が正確でないと、決算時の利益予測が大幅に狂ってしまい、経営判断も誤ってしまいます。
C社様はこれまで予定工事利益を、『受注時の予定工事利益(積算時における予定工事利益)』で把握していました。受注時から工事が完成するまでの間は、この積算時の予定工事利益で資料を作成し、工事が完成して初めて実際の工事利益に置き換えていました。
しかしながら積算時の予定工事利益と完成時の工事利益が大きく乖離することもあり、決算着地利益予測資料として信頼性が低く問題になっていました。
そこで、今回工事部の取組みにより作成された「工事利益管理表」を経営会議の資料として活用することにしました。この「工事利益管理表」は、『実行予算管理に基づいて予測した予定工事利益』によって作成されており、かつ毎月決算着地利益見込の更新が行われ、完成が近付くにつれ予定工事利益の精度も上がってきます。
工事部で作成した管理資料を経営会議資料として活用するようになり、会議資料作成を簡素化することができました。
それよりも良かったのは、決算時の利益予測の狂いが少なくなり、金融機関に対してもよい印象を持ってもらう事ができたと社長様よりお話をお聞きできたことです。
みどり合同経営 コンサルティング部門
コンサルタント 山下晶子
執筆者ご紹介 → http://ct.mgrp.jp/staff/yamashita/
前回までのレポートはこちらをご覧ください → http://ct.mgrp.jp/column/c01/