建築工事業C社様では、実行予算書を早期に提出する為の取り組みを実施し、工事着工前に殆どの実行予算書が提出されるようになりました。今回は、提出スピードアップだけではなく実行予算管理ルールを統一したことによる効果についてお話したいと思います。
【11.実行予算管理ルールの統一化】
実行予算書を早期に作成提出できるようになった工事部では、次のステップとして実行予算管理について見直すことにしました。実行予算管理とは、工事を大まかな種別に分類し、それぞれの予算に対して実際使ったコストを把握し、計画通りの利益を出すために管理する事を言います。
今まで当社では、実行予算管理は現場代理人に任されており、現場代理人毎に、実行予算管理を行っていました。しかしその実行予算の管理方法や書式も各人により異なり、個人の能力に左右されるのが現状でした。
一ヶ月に一度実行予算と実績(実際に使ったコスト)を比較集計した表を現場代理人が工事部長に提出するのですが、人により書式が違っていたり、集計期間や項目の基準がまちまちでした。
一つの例ですが、
A現場代理人は、
実行予算と実績を記載し予算残の欄には「実行予算-実績」を記載していました。
B現場代理人は、
実行予算に対して実績と「今後工事が完成るまでに発生が予測されるコスト」を記載し、
「工事完成時の残予算」を記載していました。
もちろんB現場代理人の書式で示されている予算残の方が工事部長が知りたい数値であり、より精度が高いものです。
工事部長は早速B現場代理人の実行予算管理の書式を全現場にて使用するようにしました。これにより、工事完成時の残予算ひいては、工事利益の正確な把握に費やす時間を短縮することができました。
【12.工事別利益管理表】
工事部門の会議ではこの実行予算管理資料を基に、工事一本ごとに「実行予算・発生コスト・今後の見込コスト・予定利益」を横一列に表示した資料を作成し利用することにしました。
どの工事がどの程度進捗し、利益が出ているのかどうかを確認することができます。利益率の悪い工事に関しては、会議にて原因を説明させ、なにか良い対策がないか皆で知恵を出し合って議論できるようになりました。
工事途中の段階で予定利益を出すことにより、予定利益が低い工事に対しては早期にコスト圧縮などの対応策を講じることができるようになりました。例えば、工程や材料・外注コストに関して工事部員全員で知恵を絞ることができるようになったり、経験の少ない若手社員にとっては大変勉強となる会議になっているようです。
工事部長も以前に比べて予定利益が早期に把握できるようになったと喜んでいらっしゃいました。
次回は、この「工事利益管理表」を経営会議に活用するお話をしたいと思います。
みどり合同経営 コンサルティング部門
コンサルタント 山下晶子
執筆者ご紹介 → http://ct.mgrp.jp/staff/yamashita/
前回までのレポートはこちらをご覧ください → http://ct.mgrp.jp/column/c01/