それでは、今回から具体的に事例を見ながら「一体感」についてすこし踏み込んで考えていくことにしましょう。
その企業の経営者は、2代目で、ご支援をスタートした時には、経営者が信頼する幹部1名(部長)がいました。また、2名の取締役は、今は亡き創業者である先代が取締役に任命したもので、現在の経営者が入社した時から、幹部でいた方です。
第三者の目から見て、2名の取締役と経営者との関係は信頼関係があるようには見受けられませんでした。しかしながら、その2名は所謂、稼ぎ頭の部署の部長も兼務しており、その部署の従業員からは信頼されていました。
当時の会社は、幹部会議といえども、経営者が信頼している部長が一人で仕切り、他の部長の発言もほとんどない、単なる報告会でした。会社にも活気はなく、経営者自身も、どのように幹部の意識変革ややる気を引き出すのか迷っていました。もちろん、業績も数年低迷しており、実質的には赤字体質が続いていました。
それが現在は、当時信頼する幹部としていた部長は定年退職で去り、今は、経営者の実弟の部長と、弊社がキーマンの一人として感じていた方を経営の改革を行う部署の部長に任命し、本音ベースで経営者と議論ができる風土ができつつあります。
そして、今までぎくしゃくしていた取締役との関係も、新たに取締役会を毎月開き、今までは、経営者が一人で決めていた経営判断、例えば人事や会社全体の営業方針の相談や、業績結果の報告をその場で議論しています。
そして、そこから出てくる課題への取り組み方針を、だれが(今までは経営者のみ)各幹部や従業員へ伝えていくのかまで、議論しています。自然と取締役自身がやる気や責任感を持った発言や行動をされるようになっています。
前回お話しましたとおり、実際の取り組みをスタートしてここまで約3年、経営者の方と初めて出会ってからの期間を含めると約4年です。ここで、私自身が率直に驚いているのは、この間に、新たに社外から幹部の方を採用したわけではなく、今までともに働いていた幹部、そして従業員の方であるということです。
業績は2期連続で黒字決算でした。そして3期目は経営環境が厳しい中、利益トントンの状況です。しかし、残された時間の中で、全社一丸なって利益計画の達成に向けて、頑張っている熱い組織(一体感のある組織)になっています。経営者からは、会社の雰囲気が変わってきたという言葉が出るようになりました。
実際に行った取り組みを整理すると、一体感が出てきたポイント(作るポイント)が明確になってきます。
それは、
(1)経営者が考え抜いた上で経営計画を作り、社内に向けて目標と達成に必要な行動計画を明確に
示したこと。
(2)会議等(情報共有)について、具体的には、検討事項、管理資料、参加メンバーを目的に基づいて常に
見直し、修正してきたこと。
(3)キーマンを明確にしたこと(実弟の部長とキーマンの新部署への部長への登用)。
(4)取締役の動機付け。
(5)かつて信頼していた部長の定年退職と新卒3名(男性2名、女性1名)の採用。
の5点です。
次回は先に(5)について説明していきます。(1)、(2)、(4)については、他の事例も含めて、後に細かく説明していきたいと思います。
みどり合同経営 コンサルティング部門
コンサルタント 澤田 兼一郎
執筆者ご紹介 → http://ct.mgrp.jp/staff/sawada/
前回までのレポートはこちらをご覧ください → http://ct.mgrp.jp/column/c02/